「あ、学校にお弁当箱忘れた………」
「明日は土曜日だな」
「失敗したぁ………今日お母さんにデコってもらう約束だったのに………」
「戻るか?」
「いいよ一人で。健人くんは先に帰ってて。じゃ」
「あぁ」
あたしもそうだけど、健人くんも安心してる。
あたしたちは同じなんだと。
忘れ去られた人間なんだと確信しているからだ。
「…………?」
教室のドアを開くと、あたしの席には流星がいて、勝手に眠っている。
久しぶりに見る流星に、あたしは胸を高鳴らせた。
あーあ。
本当にかっこいいんだから……
これじゃ自分の席にも行けないじゃん。
!
流星のスマホが鳴った。
るるちゃんかな………?
「はい」
わわっ!
「あー……今もう家だから無理」
え?
?
今学校の教室にいるじゃん。
なに嘘ついてるんだ?
「じゃ…………」
なんだか冷めてる。
こんな流星知らない。
怖い。
そこにいるのは、どこか、切れてるときの流星だ。
「………帰るか」
スマホを操作している。
誰かに電話でも…………?
その瞬間、大音量であたしのスマホが鳴った。
いつもならサイレントにしてるのに!!
「ゆき?」
慌ててスマホ見てたら、いつの間にか目の前に流星が立っていた。
反射的に
………
………
「ゆき!!」
「いない!!!」
けど、流星は昔から体育会系だから追い付かれる。
左腕を思いっきりつかまれた。
あたしは…………
あたしは……
「ゆき!」
逃げようとするくらい流星が好きなんだ。
「……泣くなよ」
「へ?ほんとだ。涙が………」
「ゆきの涙には弱いんだからな、俺」
「泣かせるやつは泣かしてやる!って昔言ってたね」
はは、と笑っているが涙は止まらない。
「あれ??」
「ゆき、俺のこと信じて今日の夜に会いに来てほしい」
「え??」
「頼む。もしゆきが俺を受け入れてくれるなら、今日の22時に待ってる」
必死な流星はそれだけ言い残してあたしの前から立ち去った。