流星は走って部屋から出て、ものの数秒であたしの自宅のインターフォンを鳴らした。
その頃はあたしも走って玄関まで降りて、流星待ちだった。
玄関を開けばそこには流星が。
ずっと会いたかった。
「りゅ………」
恋しくて恋しくて
誰かをこんなにも求めたことない。
「ゆき………好きだ」
「…………うん」
あたしの手を取って、自宅に入る。
そうすればもう二人きり。
流星はあたしの両ほほを救い上げて上を向かせ、キスをしてきた。
それを心地よく受け入れるあたしは、るるちゃんのことも、健人くんのことも、今だけは忘れられると思った。
それはきっと流星も同じ気持ちだと思うから、だからあたしは流星を選んだんだ。
「っは………」
「ゆき、健人とはうまくいってる?」
「そ、んな………いってたら流星とキスなんか絶対出来ない」
「はは。なぁ、玄関じゃムードもなにもないし、中いれて」
「はいはい。ね、久しぶりに紅茶飲まない?」
「いいね」
「母さんはいつ帰ってくるかわからないけど」
「大丈夫だと思うけど」
「大丈夫じゃない。あたしの部屋行ってて」
「へーい」
あたしはドキドキした。
あんな男な流星を見たのは初めてだったから。
キスからのぞける流星は、どんな俳優さんだろうと、健人くんだろうと、かなわない。
流星が一番だから。
部屋に紅茶を持っていくと、入り口に流星は待っていてくれた。
中に入ると、あたしの机の椅子に座りこむ。
あたしは紅茶をいれるために机の前に立っている。
「あーいい匂い。ゆきの紅茶は一番だからなー」
「お湯入れてるだけだから」
「蒸時間もいい」
「それはこだわってる」
あれ?
いつも通りだ。
昔みたいに戻ってる!!
めちゃくちゃ嬉しい!
あたしはなんて幸せなんだろう。
その瞬間にあたしのスマホが鳴り響いた。
偶然にも机に上がっていたのだが、バイブで振動したために流星の足元に転がった。
ディスプレイには“健人くん”の名前があった。
「…………」
「あ、流星。出ないから大丈夫だよ」
「嫉妬した」
「え?」
「ゆきの一番は俺なのに。なんでこうなったかな…………」
「あたしの………一番は流星だよ」