「真雪ちゃーん!」
「はい!」
「帰ろう」
「お願いします」
‥‥‥
‥‥‥
‥‥‥
車が走ること7分。
自宅までナビゲーターをしていた。
しかしあるコンビニで駐車する。
「楠さん?」
「ちょっと眠いからコーヒー買ってくるわ」
「待ってます」
「何がいい?」
「では‥‥‥ミルクティを」
「わかった。待っててね」
悪いなぁ。
なんてぼそっとつぶやく。
………
………
それから4分後、楠さんが戻ってきた。
車を発進させる前に水分補給として買ってきてくれた。
しかもペットボトルのふたを取ってくれるまで。
ただあたしに「はい」と渡す瞬間に、あたしのひざにぬるいミルクティがこぼれた。
「あー!ごめんね真雪ちゃん。ティッシュ持ってる?」
「たしかバックに‥‥‥」
あたしが後ろにあるバックをあさろうと身体をひねれば、
楠さんの車にもティッシュはあった。
なのになんであたしにティッシュを‥‥‥?
この時点で気づけばよかったのに。
「はい。これ飲んで。リラックス作用があるからさ」
「ありがとうございます」
喉が渇いていたあたしは、ミルクティを一気に半分ほど飲む。
「さ、帰ろうか」
「はい!」
またあたしはナビゲーターを開始した。
「‥‥‥?‥‥‥??」
心が穏やかだ。
こんな気持ちは初めて。
身体中が熱くて、もうろうとする。
そんなあたしを見てなんだか笑っているように見えた。
けど、あたしは身体が動かない―‥‥‥。
次に目を覚ましたのは、車の中。
なんだか寒い。
ハッと我に返ると、助手席に乗っているあたしに股がってる楠さんの姿だ。
「や!!」
「おとなしくしてくれよ?せっかく気持ちよくなるお薬飲ませたんだから」
「へ‥‥‥?」
このだるさは‥‥‥そういうことか。
あたしは必死に抵抗するも、うまく動けない。
「黙っていればいいんだよ‥‥‥真雪ちゃん‥‥‥」
「っ‥‥‥‥‥‥ぃや‥‥‥春樹ぃっ!!!!!」
その瞬間だ。
車に鉄の棒かなにかで叩かれた。
慌てて楠さんは助手席から降りた。
そこには誰もいない。
「いたずらか?こんな凹ませやがって‥‥‥どこだ!!真雪ちゃん、ちょっと待っててね」
「‥‥‥は、るき‥‥‥‥‥は‥‥‥」
「呼んだ?」
なんとそこには春樹がいた。
あたしは涙目になる。
「今あいついないから逃げるぞ」
春樹はそういいあたしを抱き抱えて逃げることに成功した。
あたしたちはすぐ近くのあたしのマンションに入る。
合鍵を今でも持っていた春樹は、それを使って部屋に入って、ベッドに降ろしてくれた。
「春樹‥‥‥」
「大丈夫か?どっか痛い場所あるか?」
「あるよぉ‥‥‥ごめんなさい春樹‥‥‥あたし‥‥‥あたしは‥‥‥」
「うん」
「昔の自分を見られたくなくて、知られたくなくて‥‥‥」
「うん」
「あたしは同級生で、昔は陰キャだった。それに気づかれることが嫌だったんだ‥‥‥」
「‥‥‥うん。知ってた」
「!!」
春樹はまっすぐにあたしを見る。
「最初に話しかけたのは興味本位。でも接してくうちに好きになった。
それは昔とか今とか関係ない。おまえだけが好きになったんだ」
そっと、春樹の顔が近づく。
あたしは目を閉じて、そのままキスをした。
少しずつ、濃厚なキス。
噛みつくようにキスを春樹からされれば、身体の芯が熱くなった。
自然と求めるようにきつく春樹を抱きしめる。
「んっ‥‥ふ、ぅ‥‥‥」