「お母さん…イク!!!」
大きな声を出して
そして力尽きたという風に昌子の体に倒れた。
大輝は胸を震わせながら、汗ばんだ体を自身の母の体に密着させ、頬を昌子の鎖骨辺りに触れて、目を瞑った。
それはまるで幼い子供が疲れて母に甘えている時のようだった。
しかし大輝は丁度先月十五歳の誕生日を迎えたばかりで、ニキビのある、脂っぽい顔が昌子の首元で横を向いているのは、如何にも滑稽だった。
大輝は普通よりは整った顔をしていた。
が、思春期特有のその顔が自分の母の肌の温もりを感じているのは、矢張り妙な絵だった。
だが、そんな事大輝にはどうでも良かった。
それもそのはずで、例えば高級なフワフワのベッドに寝転んで見て、わざわざその時の自分の格好をその時一々気にする人はいないだろう。
昌子は暫く自分の体の上でくつろいでいる息子の肩を軽く叩いて、
「大輝。もう起きて。お母さん、着替えないと」
と言った。
しかし何の反応がない。
もう一度、今度は強めに息子の肩を叩き、揺すった。
「ねぇ、起きてよ。これから夜ご飯の準備しないといけないからさ。ねぇ?早く」
大輝は顔を上げた、と思うと顔の向きを変えて再び寝てしまった。
昌子は少しイラついて、先程より更に強く叩いた。
そして強引に息子の体を持ち上げて、しかし育ち盛りの大きな体を、細身の、今年で四十歳になる昌子にはそれを支える事さえ出来ず、何とか下からすり抜けて出てきた。
膣に汚れたコンドームが挟まっていた。
昌子はそれを引き抜いて、体液で濡れた股間をティッシュペーパーで拭いてから、床に散らばっていた服を取り上げて着替えた。
着替えている間、大輝は目をはっきりと見開いて、何だか部屋の角の辺りをじっと見詰めていた。
「いい加減起きなさいよっ、ほぅらっ。風邪引くよ」
大輝は起き上がった。
昌子は大輝の服を適当にまとめて、それを渡した。
萎えたペニスを堂々とぶら下げたまま、大輝はそれを受け取り、自分の部屋へ戻って行った。
昌子は自分の息子のこんな姿を見届けて、不思議な気持ちになった。
昌子は、自分の息子とのこのような行為に一切の罪を感じていなかった。
悪い事と頭では理解しているのに、心は、全くそれを理解していなかった。
何より昌子の恐れていたのは、この事が夫にバレてしまう事であった。
昌子は最近、夫が本当は自分と大輝との関係を秘かに知っていて、しかしそれの罪の重さの為にわざと黙っているのではないか、そう思う事があった。
昌子はそんな不安を抱いた時から、用心深く夫の言動を観察して見た。
しかし昌子には結局わからなかった。
まさか直接それを知っているかどうか聞く訳にもいかない。
きっと考えすぎだろう、そう思った。
それが本当だと思った。
それでも昌子にはそれを心の底から信じられなかった。
大輝が部屋から出て来た。
如何にもぼんやりしていた。
「どこに行くの?」
「トイレ」
そう言い捨てて、昌子の横を通り過ぎて、トイレに通じる廊下に出た。
声変わりした低い声で発音された三文字が、暫く昌子の耳にへばり付いた。
昌子は台所へ行き、ゴミ箱にコンドームを捨てると、手を洗い、夕食の支度を始めた。