バイトは、ここだ。
真夜中の交通整備。
住んでるところから電車で15分のところにある、
大手スーパーの交通整備をしている。
意外に人気の仕事なわりにはなかなか募集していなかった。
けれども採用を勝ち取ったあたしには何かしらの縁はある!
そしてそれがいずれ父の借金を返済できる!
と信じてあたしは毎日働いては時間を費やしていた。
けれどもあたしに違う縁もやってきた。
それはある日の帰り道の話。
なんだか視線を感じながらも交通整備地から帰宅していた時だ。
つけられてる気がした。
怖くて、怖くて、
初めて女性の自分を呪った。
気が付けば後ろにいた人が走って、あたしの腕をつかんだ。
「きゃっ…………!!!」
「大丈夫か?」
「…………へ?」
そこにいたのは、
「あ、え?お坊ちゃま!?」
「やめぇその言い方」
そこには母が働いている、つまり今住んでいるお屋敷の社長のお孫さんがいた。
………
………
「アンタこんな時間に何やってんの?」
「お願いします!黙っててください!!」
「どうでもいいけどつけられてたね」
「…………」
「一応アンタも女性なんだからこんな時間に出歩くな」
なんだか一本の線が、
ピアノ線のような頑丈で丈夫な線が、
お坊ちゃまが断ち切ってしまった。
「何も知らないくせに!!苦労知らずで育ってるお坊ちゃまなんか…なんか………」
わかってる。
こんなこと言っても意味ないし、お坊ちゃまを傷つけてる。
人を傷つけてる。
「なんか知らんが……アンタ人間らしくていいな」
「へ?」
「俺より人間らしい。俺は所詮金の上に立ってるだけ」
「…………ごめんなさい」
「ただじゃすまない。ちょっとこっちこい」
「な、なんですか?」