マニアック

お兄ちゃんだって思ってたのに

「う、うぇ、も、限界ぃぃ」

涙まじりの情けない声音である。

梨々香はぐずぐすと泣きながら、目前の男の肩を掴んだ。

くく、と意地の悪い笑みが見上げた先から降ってくる。

「僕の指を咥え込んでから、まだ1分もたっていませんが」

「っあ!やだ、や、深……っ」

抗議のつもりで肩をぎゅっと掴むと、彼は腰をかがめて梨々香に口づけようとした。

首を振って避けるも、壁と男の体に挟まれ逃げ場はなく、結局はいいように口を吸われてしまう。

「…はぁっ、う、ずっと頼りになる優しいお兄ちゃんだって思ってたのにっ!こんな、ひど……っ、空也のバカ!」

「ええ、ずっと頼りになる優しいお兄ちゃんだったんですから、もうそろそろいいでしょう?」

「いいわけあるかぁ!…ッ、や、あ、ぁッ」

ぬぽ、と梨々香のはらから空也の長い指が抜ける。

それを惜しむように淫露が一筋、太腿ふともも
を伝い落ちていった。

なんてはしたない、彼女は羞恥に頬を燃やして、ますます強く空也の肩を握り込む。

この優しい顔した酷い男にどうか気付かれませんように――。

祈るようにぎゅうと目を瞑ると、また忍び笑いの気配。

彼の武骨な指先が、つぅと脚の内側を撫でる。

「あれ?これって…」

「……っ、い、言わないで!」

慌てて両掌で男の口元を抑え込むが、空也は揶揄やゆするように唇をにやつかせた。

片眉だけを器用に吊り上げて、瞳を眇める。

「にやにやするのも止め、――ッあ!やぁぁっ!」

前触れもなく、2本の指が秘孔にぬぶん、と突っ込まれた。

円を描くように掻き混ぜられ、梨々香の瞳をじわわと涙の膜が瞳を覆う。

ひ、う、と引きつった悲鳴を漏らしながら、空也の肩にすがり付いた。

出会ってから今日まで、爽やかな顔で礼儀正しくお兄ちゃん面してきたこの男は、梨々香に触れたことも、無体を強いたこともなかった。

なのに。

「んぅっ、そこ、奥……っ」

いじめてあげますね」

最奥を指先でくちくちと擦られて、梨々香の背が弓なりに反る。

涙がまなじりから溢れて、唇がおののくように震えた。

はっはっ、と荒い呼気が喉を走る。

「ここで感じる女性は感じやすい体をしている、とよく言われますが。
その説に寄るなら、はは、梨々香は相当なふしだらということかな」

「ひぐ、っ……う、やめ、ぁ、あ」

空也の不躾ぶしつけな指先は、梨々香の制止になど従わずに、肚の奥を繰り返しなぶり続ける。

寒気に似た悦感が頭の後ろでとぐろを巻き。

「い、く、……ッい、いっちゃう、から……っ!ひぃっ、あ」

「ふ、もうイってるくせに」

ひくくっ、と秘処が大きく痙攣する。

続く断続的な締め付け。

両脚が震え上がって床を蹴ることもできない。

無理矢理に突き入れられた空也の指の、耐え難い異物感が気持ちよかった。

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