彼氏はいないし、友達もほとんどいない。
社会人として働いてる私は、会社と自宅アパートの往復をするだけ。
もちろん、会社の人とのつき合いなんてない。
今夜も同僚達による飲み会が開かれてるはずだけど、声などかけられるわけもないから私はすぐに帰宅。
「え?あの人も誘う?やめようよお」
そんなバカな女同僚の声を聞きながら。
私は資格持ち。
資格だけでなくてかなり戦力になる技術も持ってるから、他の同僚とは給料面でも差がある。
そんなとこも妬まれてるんだよね。
女で資格持ってて、社歴が長い先輩よりも稼いでるから。
帰宅すると、あんまり使わないけど一応設置している固定電話が光ってる。
留守電に何か入ってるみたい。
「詩乃(うたの)ちゃん。お母さんです。
今度、みっちゃんが小学校に入学するの。
だから、今度お祝いをあげてね」
………
………
ウザい。
普段は連絡をしてこないくせに、こういう時だけはしっかり連絡してくる。
というか、みっちゃんて誰?
ああ。
クソ姉の子供か。
何であんなのにあげないといけないの?
大体私は姉のことが嫌いだから、あいつの子供を可愛いと感じたこともない。
留守電メッセージはさっさと消去した。
私をつまらない人間だと罵ってたくせに、本当にめんどくさい。
………
………
………
隣の部屋で物音がする。
ああ。お隣さんが帰ってきたのか。
商売女みたいに派手な女。
趣味がほとんどない私の唯一の楽しみは覗き。
高給取りの私がボロい1Kのアパートに住んでるのは、それが理由。
最初は薄い壁越しに聴こえる音だけで良かったけど、中を見たいって気持ちが強くなったんだ。
壁に作った穴を少しずつ奥まで広げて、向こうの部屋と貫通させた。
壁自体が古くて汚いから、貫通させてた後も意外に誰にも気づかれない。
壁の汚れ程度にしか思わないんじゃないかな。もちろん、私側の穴は普段隠してる。
ボロいアパートだからか、住人は4年の間で5人くらい変わった。
一時的な仮住まいの夫婦とかいたけど、今住んでるのは派手な女。
こいつ、結構いろんな男をつれこんでは情事を繰り返してる。