「綺麗、です……」
その言葉が聞こえて、私がゆっくりと目を開けると、彼はいつもよりももっと優しい微笑みを浮かべて立っていた。
なぜか少し、彼は泣きそうだった。とはいいつつ、なぜか私も、泣きそうだった。
彼も、私と同じように、生まれたままの姿だった。
彼の体はたくましかった。けれど、無駄な筋肉はなく、とても引き締まった体をしていた。
手足も長く、肌もつやつやで、はりもある。
健康的な体だった。
そして、そのちょうど真ん中あたりで、ずどんとそそり立っているペニス。
そのどれも全部が、とても綺麗だった。
「健くんも、綺麗だよ」
「あ、ありがとうございます」
彼は照れて、少し顔をそむける。
私は、ベッドに横になった。きっと初めては、正常位がやりやすいと思う。
「この方が、いいよね?」
「そう、ですね」
不慣れな二人。
どっちも初めてならきっと、こんな風になってしまうのも仕方ない。
さっきの妄想の中での健くんは、もっとリードしてくれる感じだった。
でも、こういう不慣れな彼もかわいい。
「挿れても、いいですか?」
「うん」
ごくり。
彼の喉仏が上下した。
今の私に喉仏があったら、きっと彼と同じように大きく上下したと思う。
そして彼は、ゆっくりと私の性器に自分の性器を当てた。
ひた、とあたたかいものが当たる感触があった。
それから、ゆっくりと穴を押し広げて、彼の太くたくましいそれが、じんわりと中へ入ってきた。
「んんっ」
「い、痛かったですか?」
「ううん」
これは少し嘘だった。
さすがに多少は痛い。
いつも指しか突っ込んでいない私からすれば、それはあまりに太すぎた。
でも、その痛みを補って余りあるだけの幸せが、私の中にあふれていた。
だって、ワンチャンあればな、なんてずっと思っていたイケメンと、今こうしてつながっているのだから、幸せじゃないはずがない。
もちろんイケメンだからいいっていうわけじゃない。
性格もめちゃくちゃいい。
きっと、私を大事にしてくれるだろうって思う。
そんな子とこうして交われるのだから、幸せじゃないはずがなかった。
「大丈夫、ですか?」
「大丈夫だよ」
どうやら彼のモノは全部入ったらしい。
全部入ってみると、意外と大丈夫だった。
中が広がったのか、少しすると痛みもなくなった。
「じゃあ、動いていいですか?」
私はうん、と頷いた。
すると彼は、ゆっくりと動き始めた。
「ああっ!」
思わず声が出てしまった。
やばい。
一回抜かれただけでイってしまった。
我慢するとかじゃなかった。
そういう次元の快感じゃなかった。
私、男だったらヤバかったな。
三擦り半どころか、半擦りで絶頂はさすがにひどすぎる。
でも、そこからもヤバかった。
彼は次第に、腰のストロークを速めていった。
抜き差しを繰り返すうちに、エンジンがかかったみたいに彼の腰はスピードを上げて動いていった。
そのたびに私は、何度も何度も絶頂に近い快感を味わうことになったのだ。
なにこれすごい。気持ちいいなんてもんじゃない。もはや拷問だ。快感の拷問だ。
アへ顔というものは都市伝説だと思っていたけれど、これは確かに表情なんて気にしていられなくなる。
とにかくすごい。
「ん、んん」
ぱん、ぱん、と大きな音を立てて二人の腰がぶつかり合う。
「はぁ、はぁ」
彼は息を荒げながら、私の中でたけり狂った欲望を暴れさせていた。
それは存分に暴れていた。もう私の理性はとうの昔にぶっ壊されていた。
「気持ち、いいです」
「私も、めちゃくちゃ、気持ちいい」
私は彼の体を引き寄せてキスをした。
めちゃくちゃに気持ちいいことを伝えるために、めちゃくちゃに激しいキスをした。
下の口も、上の口も、激しく乱れる。
液体がぐちゃぐちゃと音を立てる。
もう二人とも、隣の部屋のことなんて気にしていなかった。
それからしばらくして、彼は小さく私の耳元でささやいた。
「だめだ、咲さん」
「ん?」
「イ、いきそうですっ!」
「イっていいよ、ゴムつけてるしそのまま中で」
「はいっ!」
そう返事したとたん、私の中で何かがはじける感覚があった。
たぶん、ゴムの中で彼のミルクが暴れているのだろう。
すごい量のミルクが、中で噴出されていることを、私は感じた。
「はぁ、はぁ……」
二人とも息は乱れていた。
そりゃそうだ。いきなりフルスロットルでこんなぶつかり稽古をすれば、息だって乱れる。
「気持ち、よかったです」
彼はそう言いながら、ゆっくりとモノを引き抜いた。
ゴムの先端には、これでもか、というほどのミルクがたまっていた。
「私も、気持ちよかったよ」
そういってから、私はぐちゃぐちゃになった股のあたりをティッシュで拭いて、ごみ箱に投げ入れた。
交わり終わった私たちは、改めて向き直り、微笑み合った。
「遅くなったけど、これから、よろしくね」
「はい、また家、来てもいいですか」
「もちろん」
私たちは、そう約束してから、短くキスをした。