恋のはじまり

王子様の実態は…

けど、なんだか守屋さんに感じたキュンキュンは違うんだなー…。

「そうだ工藤ちゃん。いいこと教えてあげる」

「なんですか?」

「俺、今さ…フリーなんだけど」

「そうですか、じゃ、お疲れ様です」

「ちょっと俺スルーかよ!!」

「冗談ですよ。桐生さんなら可愛い彼女できますよ」

だって…

桐生さんも優しいから。

そのままあたしはその場から離れてロッカーに向かった。

「…もう彼女候補からフラれたよ…」

そんな桐生さんの言葉は聞き逃したあたしだった。

———

———

———

「あれ?工藤さん残業?」

場面は変わり、ブースに一人残されたあたしに気付いた守屋さんが話しかけてきた。

「はいーちょっと頼まれて…」

ちょっと!!

あたしただたんに先輩から後処理頼まれてブルー決め込んでたけど、守屋さんが話しかけてくれるなんて夢!?

「工藤さん?」

しかもあたしの名前を知ってる!!!

「おーい」

「あ、はははい!!すみません!!残業してます!!」

「大丈夫?顔が真っ赤」

「大丈夫で―…」

返事の途中、ブースに鍵をかける音がした。

見ると警備員さんらしき服装の男性が施錠してしまい、その場からいなくなってしまった。

慌てて守屋さんはブース入り口に駆け寄って、ドアを開けようとするも開かない。

密室になってしまう。

「…仕方ないか。警備の人は3時間ごとに再巡回するからそれまで待とう」

あたしの心臓は破裂しそうだよ…。

まって…誰がこのシチュエーションを望んだ!?

あたし心臓持たないわ!!

挙動不審になっちゃうよぉーーー!!

「工藤さん?」

「あ、の!寒いですね!なんか暖房も切れてるみたいだし!!」

「それよりさ、なんでこのリーダーの業務をしているの?」

「えっと頼まれて…」

「なんで?」

「今日はなんか用事があるみたいです」

「誰」

なんだか…怒ってる??

「伊藤さん…」

「…またあいつか」

「また?」

「あいつ、男と会うときは誰かしらに残業押し付けんだよ。ったく。明日フィードバックだな」

いやいやいや、このシチュエーションになるなら幸運ですわ!

ただ心の準備が欲しかっただけで…。

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