「っ……くしゅん!!」
さすがに冷めてきたので鼻水が出た。
持っていたティッシュを探すもなくて、代わりにハンカチを出した。
「菜々美!」
やだ。
海斗の幻聴が聞こえた。
潔くなりなさい、自分!
「姉ちゃん大丈夫?雨だし送るよ?」
強引なナンパ。
でもまぁ…………
「お願いします」
「…じゃ、助手席乗って」
あたしは車のドアに手をかけた瞬間、
違う人の大きい手があたしの手を止めた。
「!?」
「っはぁ、は、菜々美!」
すぐさまあたしは走り出す。
けど、あっという間に追い付かれて、手首をつかまれた。
そして振り向けばあたしは海斗の腕の中にいる。
「どうした…………?俺なんかしたか?」
「…………」
「菜々美。話し合おう」
「…………やだ」
「とりあえず、風邪ひくからどっか移動しよう」
「ならラブホ行きたい」
「!!」
断られるんだろうな。
だって避けてたもんね、いっつも。
「いいよ。菜々美が望むならどこだって……天国だって地獄だって、どこでも行くよ」
馬鹿だあたし。
こんな言葉一つで舞い上がるなんて。
けどそれと同時にうれしかった。