ある朝、わたしはいつものように教室に入って挨拶をして、美しい声を聞き、美しい顔を見ながら、自分の席に座った。
わたしは直ぐに平松君の異変を感じ取った。
どうしたんだろう、と思いながら、わたしは矢張りいつものように忙しく彼の所へ向かった。
そして今日の理科の実験や一週間後の期末試験の事を話していると、急に平松君が神妙な面持ちでわたしの顔を見た。
「あのさ、その…」
そして机の中をガサガサさして、何かを取り出した。
それは手紙だった。
「これさ、暇な時にでも読んで。そして返事を
わたしはそれを受け取った。
二三人が入って来て、わたしは平松君の席を離れて自分の席に座り、平静を装いながら、しかし震える手で彼から貰った手紙をカバンに押し込んだ。
そしてわたしは腹の底から湧き上がって来る喜びを奥歯でグッと噛み殺した。
手紙の中身は何なのか全くわからなかったけれど、例えそれがどんな内容であれ、あの平松君から手紙を貰えただけでもう幸せだった。
………
………
学校が終わって、わたしは家に帰ると、早速手紙を読み始めた。
その内容を全てここに書く事は出来ないが、いわゆる「ラブレター」であった。
わたしは何回も何回もそれを読んで、何度も頬を引っ張ったり目を擦ってから、再び彼の「ラブレター」を黙読した。
これが嬉しくない訳がなかった。
わたしの胸にはあらゆる感情や妄想が溢れ出て来て、部屋の中をグルグル歩き回っていた。
ヤバいヤバいヤバい!!!
わたしは嬉しさに体を震わせていた。
こんなに喜んだ、体を震わせるほど喜んだ、そんなことは今までに一度もなかったし、きっとこれからもないだろうと思われた。
わたしは幸福を感じていた。
それからハッとして、急いで家を出ると、近所にあるダイソーで手紙用の紙を買った。
それからわたしは机に向って、ボールペンで手紙を書いた。
もしかするとメチャクチャな文章を書いていたかも知れない。
只自分の平松君に対する今までの沢山の想いを
………
………
翌日、わたしは教室に入ると挨拶をせずに一直線に平松君の方へ歩いた。
驚きと不安に強張った彼の表情を見下ろしながら、わたしは昨日書いた手紙を渡して、何も言わずに自分の席へ行った。
平松君は直ぐにわたしの手紙を開いて読み始めた。
そして暫くして、平松君はわたしの方へ振り返った。
その顔は先程の緊張した表情から力が取れて、歓喜の念に溢れていた。
「いいの?!ほんとうにいいの?!!」
わたしはニコッと笑って、ゆっくりと頷いた。