「そして特待生で高校進学決定。
だけどもその勉強に必要な費用を工面していた母親がある日倒れました」
「!!」
「急性脳梗塞という診断。さらに記憶障害も。
結果、学校へは亡くなった父の遺言通りに、
仕事は入院するための資金稼ぎをすることに」
「………そんな…………」
「学校帰りは真っ先に病院に来て、
母親からよその子なのになんで構うのかと、毎回激怒される。
それでも自分は笑って受け入れるのです」
しゅん、となった。
想像しただけで悲しすぎて。
「だから勉強はバイトが始まるまで病室でして、
バイトは母親が眠ってからなのです」
「っ…………」
あたしは涙が出た。
あいつ、そんなことかくしてあんなにあかるくしてたんだ。
何も知らなくてごめん。
「そういう事情があったんだ…………」
「あくまでも、とある人だね」
「あたし………ひどいこと言った…………」
「傷つかない人間なんていない。傷ついて、傷つかれて人は成長する。それは覚えておこうな」
「うん」
「さーて、母さん、ごはんにしよう!」
「はいはい」
…………
…………
…………
翌日、あたしは学校帰りに杉本を確かめるために後を追った。
するとやはりお父さんのいう通り病院に直行していた。
よく顔を見ると、痩せてきてる。
「あ、珍しいね」
杉本の後ろにいたあたしの背後に立ったお父さん。
「お前がここに来るなんて珍しいじゃないか」
「!!」
「おーい、杉本くん!」
「あれ?三浦せんせ…………い!!??」
「今日も忙しそうだね」
「なんでお前ここに………」
「ぼくが呼んだんだ」
「三浦って………まさか先生の娘!?」
「正解だよー」
わはは、と笑っているお父さん。