彼のそそり立った欲望の先端が、私の下の口に触れるのを感じた。
いつもなら、ゼロコンマ数ミリの理性を挟んでキスする私と彼の愛情。
それが、今は欲望をむき出しのままでつながろうとしていた。
「挿れるよ?」
「はい」
彼の声も、いつもよりも少し緊張していることは分かった。
私も、体がこわばってしまっている。
ゆっくりと、彼の欲望は私の穴を押し広げていった。
そして、ゆっくりと、ゆっくりと、中へ沈み込んでいった。
「んう……」
彼と私は、ほぼ同時にそんな風に吐息を漏らした。
そして、それは完全に、つながった。
私と彼が、何の隔たりもなく、本当の意味で、一つになったことを感じた。
いつもよりもダイレクトに彼の熱を感じる。
血流を感じる。
そして、欲望を感じる。
「すごい、です……」
「そう、だね……」
彼の表情にも、いつも以上の快感が走っていることがありありと表れていた。
声にも息が混ざっていて、聞き取りづらい。
そう、感触がもう全く違うのだ。
たった一つの理性を取り去ってしまっただけで、これほどまでに感触が変わるのか、と思うと私は言葉を失うほどだった。
しかも、挿入しただけでこれなのである。
「動いていい?」
「も、もうちょっと待ってください」
この感覚にもう少しなれないと、動き始めたとたんに、たちまち私は壊れてしまうと思った。
だから私は、一つだけ、小さく深呼吸をした。
そして、彼と生でつながっている感覚を、全身になじませていった。
手の指先までその感覚がいきわたったのを確認してから、私は言った。
「いいですよ、浩太郎さん」
「うん、わかった」
そういうと、彼はゆっくりと動き始めた。
それだけで、私はもう壊れてしまいそうになった。
ああ、気持ちいい。
その思いだけが、私の全身を支配した。
気持ちいい。
もっと、もっと欲しい。
ぐちゅり、ぐちゅりと、私たちが結びつく音が、いつもよりも激しく、そして生々しく、響きはじめた。
「ふぅ、はぁ、んん……」
彼の表情も恍惚としていた。
吐息の中に声が混ざって、淫靡な響きを伴って私の鼓膜を揺らす。
「きもち、いい……」
「僕も、だよ」
ぱん、ぱん。
ぐちゅ、ぐちゅ。
私たちの言葉の合間に、その音は間断なく鳴り響く。
あの、あるのかどうかも分からないような薄い薄い理性をつけているかいないかで、これほどまでに感触が変わってしまうなんて、まさか思いもしなかった。
そして私は、そんな初めての体験をさせてくれたのが、彼でよかったと、本気でそう思った。
私の奥底を、彼の欲望が容赦なくついてくる。私の中で、あの太くたくましい、綺麗な欲望が暴れているのかと思うと、愛おしくなった。
「抱きしめて」
私は無意識にそういっていた。
彼は、恍惚とした表情で、しかしいつもの優しい微笑みを浮かべながら、私のことをぎゅっと抱きしめてくれた。
力強く、私の体を抱いてくれた。彼のぬくもりと、やさしさが伝わってくる。
彼の高鳴った心臓の鼓動が私の胸に伝わってくる。
きっと、私の鼓動も、彼に届いているに違いない。
この鼓動が伝わっているのだとしたら、恥ずかしいな、なんて思った。
もう、すべてさらけ出しているのに。
私がこんなにうぶだったなんて、彼に会うまで、知らなかった。
「ん、んんう……」
息をするのも苦しい。
息を吸えば、快感が全身に染みわたってしまうし、息を吐けば快感が脳天まで突き抜けてしまう。
どちらにしても、今まで想像したこともなかったような快感に満ち溢れてしまうのだ。
それでも、彼の動きは間断なく続いている。
そこまで激しくはないけれど、確かに、リズムよく、間断なく、続いている。
彼の腰の筋肉はどうなっているのだろう、と思うくらいに、それは淫靡な音を立てながら、気持ちよく続いていくのだ。
体が快感でしびれていく。
「んんっ!」
彼のその一声と共に、一段と深く彼の欲望が私の奥底を突いた瞬間、私は唐突に、絶頂を迎えた。