(もう…少し…)
そう思った時だった。
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急に上半身を起こした野村に押し倒され、珠菜は床へ倒れこむ。
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「え、なに…?」
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「騎乗位、ヘタですね」
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「……は?」
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さっきまでのおどおどしていた野村からは考え付きもしない言葉に珠菜は目を丸くする。
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「何言ってるの?キスもしたことない童貞が、騎乗位の上手い下手なんてわからないくせに…」
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「女の子と付き合ったことがない、とは言いましたけど実は童貞じゃないんですよ」
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ぽかん、と何も言えずに野村を見つめる珠菜に、彼はにこっと笑ってみせた。
「あなたと同じです。時々遊んで、気持ちよければ良い。サークルでも色々噂は聞いてますよ」
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どんな噂が流れていようが気にはならないが、この小動物のように地味でおとなしい後輩が自分と同類の、つまりSEXに慣れた遊び人だということは珠菜にとってレンガで頭を殴られたような衝撃の事実であった。
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「SMごっこは楽しかったですか?」
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顔が熱くなるのがわかった。
騙された、恥ずかしい、この男は、調子に乗ってると思いながら私に合わせて弱々しいフリをしていたのか…
野村の手を振りほどき、珠菜はバツが悪そうに体を起こす。