彼を好きになったら駄目だって…!

雨の校庭に傘の花が咲く。普段は石畳の灰色が目立つ殺風景な大学に皆が思い思いの傘を手にして来るものだから乱雑な程に色が溢れかえっていた。

有紀は肘をついて、それを気だるげに二階の窓から見下ろす。傘はケバケバしいほど華やかだけど誰が誰だかわからない。
窓から入り込んでくる雨に冷やされた風から逃げるように彼女は窓を締めて廊下へ向かう。雨の日らしいこもった匂いが少し鼻についた。

「有紀、どこいくの?」

声を掛けてきた仲の良い友人が「トイレなら私も行く」と続けてきた。

「トイレじゃないよ、部室棟」

あぁ、そう、とあからさまに嫌そうな声色で彼女は上げかけていた腰を降ろす。
私は“また後で”と手を降って廊下に出た。私の姿が見えなくなったことで普段は仲の良い友人達は好き勝手言って悪口に花を咲かせる。

「…あの子、部室でヤってるってホント?」

「そうみたい、それもあの岡田と」

「ありえない、部室でヤることもだけど…相手がさ」

「どう見ても遊ばれてるだけだよねー」

「バカみたい、ていうかバカでしょ」

姿が見えなくても声は聞こえてるかもしれないとは誰も思わないようで、遠慮も躊躇もない言葉が背中に刺さる。けれど本当に私はバカなので何も言い返せない。
(好きに言えば?)そう心の中で言い捨てると極力足音を立てないよう気を配りながらにその場を去った。

「あんっ!はぁっ、は…あぁぁっ…」

「はは、そんなに気持ちいい?」

「ふぁ、うんっ、きもちいいっ…ん、あぁっ」

ありきたりな言葉で“割り切った関係”と言ってしまうのは気が進まないけどあながち間違っても居ない。

幸輝先輩は彼女をつくらない。セックス出来れば誰でも良いというスタンスで、連絡も最低限しかしなければデートもしない。会ったらただヤるだけ。
だから多くの女性の心象はとても悪いのだ。ただ、彼は外見だけは抜群に良いからセックスの相手が尽きることはないだろう。

来る者拒まず去る者追わず、面倒な関係を嫌っているからきっと色んな女性の恨みを買ってる。

(彼の性格だもん、本気で好きになるからいけないんだよ)

私はバカだけどそんなヘマはしない。

「あっ…ん、ふ、幸輝、きもちいいっ!」

「うん、俺も」

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