「あーあ……」
ホットミルクをほとんど飲み干すと、いつの間にか涙も止まっていた。
辛くて仕方がなかった気持ちもずいぶん落ち着き、冷静になってくる。
「いっつもこう、私ってわがままなのかなあ……甘やかしてほしいだけなのに……」
「どう考えてもわがままだろ」
「そんなことないと思うんだけど……だって優馬がしてくれるくらいでいいんだよ、それってそんなに高望みかなあ……そんなことないでしょ?」
「はあ……」
幼馴染がしてくれるくらい、自分に優しくしてくれる人がいい。
文句を言いながらもなんだかんだ優しい優馬とずっと一緒にいたものだから、麻美子の基準は優馬なのだ。
それなのに、それを聞いた優馬はわざとらしくため息をついた。
「それいつも言ってるけどさあ……それならもう俺でいいんじゃね?」
「えー?それ本気で言ってる?優馬と私だよ?」
「なんだよ」
「優馬はかっこいいけど……優馬は優馬じゃん、そういう目で見たことな、え!?」
突然立ち上がった優馬が麻美子に近づいてくる――そう思った次の瞬間には、麻美子はベッドに押し倒されていた。
「えっ何何なに!?」
優馬に上から抑えつけられている今の状況が理解できず、麻美子は目を瞬かせる。
優馬の瞳が、麻美子を射抜いていた。
「そういう目で見たことないの?俺の事?」
「えっ、ない、ないでしょ?だって幼馴染じゃん、ずっと一緒にいたし、優馬だってそうでしょ?怒ってる?え、なんで、何――」
「見てたよ、俺は」
「え――」
「俺は麻美子のこと、そういう目で見てたよ」
至近距離で見る優馬の瞳は、今までに見たことがないくらい真剣だった。
く、とベッドに押し付けられた手首が痛い。
目の前の幼馴染が知らない人みたいで、どっどっと心臓が
「そういう、目って……」
「俺が麻美子に甘いなんて当然だろ、だって、お前のこと好きなんだから」
優馬の言うことは理解できた。
だって、優馬の瞳は今までの恋人たちが麻美子に向けるものと同じだったから。
それでも、それを優馬が言っていることがすぐには理解できなくて――
「好き、って、え、私も優馬のこと好き、だよ?」
「だからそういうことじゃないって……」
はあ、とため息をついた優馬はもう、麻美子の知っている彼とは違っていた。
「わからせてやるよ、どういうことか」
耳元をくすぐる低い声に、心臓が痛いほどに飛び跳ねた。