「凛花(りんか)~!今日の夜合コンがあるんだけど……行かない!?」
授業が終わった帰り道、友達のきよみが突然凛花にそう声をかけた。
茶色のセミロングの髪はふわりとパーマがかかっていて、今流行りのメイクをしたきよみはどこにいてもよく目立つ。
明るくて、誰とでも仲良くなれる人懐こい性格の彼女は、凛花の数少ない友人だった。
「え、でも私が行っても……盛り上がらないと思うよ……?」
我ながらつまらない返事だな、とは思うが、事実なのだから仕方がない。
きよみと違って凛花自身はあまり愛想もなく、よく「クール」と称されるような性格をしている。
実際にクールかといわれると、どちらかといえば素直に感情を出せない性格なのだが、仲良くならないとそれに気付かれることもなく、結局距離を置かれてしまうのだ。
「そんなことないってー!私のバイト先の人がセッティングしてくれた合コンなんだけどね、突然今日に決まっちゃって……凛花って今バイトもしてないし彼氏もいないでしょ?ね、行こうよ!」
「まあ、そうなんだけど……」
「私がいるから大丈夫だって、ちゃんと盛り上げるし♪それに、凛花の彼氏になる人がいるなら私がちゃんと見ておきたいしさ♪」
「ええ、何それ……」
ねっ、と明るく肩をたたかれて、凛花はつい頷いてしまった。
きよみのこういうところが羨ましくもあり、たまに面倒くさくもある。
ただ、確かにバイトをしていないのも本当だし彼氏もいない……そして、きよみがその場にいるのなら気まずい空間にならないということもわかっていた。
「やったー♪もう一人来るんだけど、その子は別の学科の子なの!後で凛花に紹介するね!」
どうやらもう一人は凛花が知らない人らしい。
中途半端に知っている相手よりは、全く知らない相手の方が少々気が楽かもしれない……凛花はそんなことを思った。
夜19時、指定された集合場所に行くと、きよみともう一人の女性はすでに凛花を待っていた。
凛花を見つけると、きよみがぶんぶんと手を振ってくれる。
きよみはいつもより派手目の化粧にワンピースで、まさにモテそうな女子、という感じの恰好だった。
「この子、園子(そのこ)っていうんだよ!ちょっと人見知りなんだけど、めっちゃいい子だからね!」
「ちょっときよみ……まあいいや、園子です、よろしくね」
「凛花です、よろしく」
園子と名乗った女性は、きよみとはまるでタイプが違っていた。
ストレートの黒髪に、はっきりとした顔立ちのまさに「美人」といった感じだ。
きよみがいなければ、おそらく仲良くなることはないような、少しとっつきにくさを感じるタイプだった。
凛花は少し赤みの混じったヘアカラーのショートカットで、今日は大きな丸いイヤリングを付けている。
ツリ目の大きい瞳は猫のようで、本人に自覚はないのだが男性受けをする見た目をしていた。
少し胸元の空いたシャツに、スキニーデニム。
赤いハイヒールを履いていて、タイプの違う美女が三人集まっているのは人目を引いていた。
「さ、じゃあ行こっか~!とりあえずカラオケで一次会ってことになってるからさ!」
きよみが先頭に、園子と凛花はあとに続いた。
駅の近くのカラオケで男性三人と合流し、二時間部屋を取る。