どうしてこうなったのか、子供の頃からBMI30を切ったことがない私が筋肉系イケメンとおつき合いできることになった。
私の名前は
大学生の現在もそう呼ばれている。
モデルのようなスレンダーな体に憧れてダイエットしたことはある。
それこそ、1つや2つでなくたっくさんの種類を試した。
が、1つとして成功することはなく、結局体重は落ちないまま。
開き直って、良く言ってふくよかなこの体型を私のセルフチャーミングポイントとしている。
デブをからかわれることはあったけど、私は力も強かったので幼稚園の頃から男の子に喧嘩で負けたことがなかった。
なので、いじめられている子を助けるのは私の役目。中学生の時は、不良上級生からカツアゲされてた男子を助けたことがある。
皆から「頼りになる姉御」扱いされるのは嬉しかったし、高校生の時は痴漢に悩むクラスメイトのボディーガードもしていた。
女扱いされているとはとても言えないけど、頼られるのは嬉しいし、自分はこんなものと思っていたので自分の立ち位置に不満はなかった。
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大学生になったある日、お弁当屋のバイトから帰宅していた時のこと。
店長夫婦が余った食材で簡単なお弁当を作ってくれたので、それを食べるのを楽しみに借りているアパートまでの道を歩いていた。
その時、「放して!」という女性の声が前方から聞こえた。
時間は夜8時。
暗かったけど、街灯がポツポツ並んでいるので、周囲の状況は分かる。
私がいる位置から距離はあったけど、女性らしい人間が男に見える人間から車に押し込まれそうになっていたのが分かった。
それを見た瞬間、私の体は勝手に動いてた。
私はデブだが、実は足が結構速い。
おかげでもみあう男女までの距離はそこそこあったものの、女性が車に押し込まれたタイミングで私は男にボディーアタックをかますことができた。
「うぐっ」とも何とも区別のつかない声を出しながら、男が地面に倒れる。
男を私の体全体で押さえつけながら車の方を見ると、女性が車から這いずるようにして出てきた。
「逃げて!早く逃げて!」と言いながら私は、私を押しのけようとひっかいてくる男の顔を持っていた荷物(弁当)でバコバコ叩きまくった。
女性が走っていくのが見えた。
男は何か言いながら私を押しのけようとしたけど、ここで解放したら私も女性も危ないと全体重をかけて男を押さえこんでいた。
女性が逃げてすぐにパトカーが到着した。彼女が呼んでくれたらしい。
実は私が不審者を捕まえるのはこれで何度目か。
知り合いになったおまわりさんと、「やっぱり警察官になれ」「嫌ですよ。私は海洋学をやって、新しい食材を見つけるんです」のお決まりの会話を交わすのも何度目か。
助けた女性と迎えに来た彼女のお兄さんからは、何度もお礼を言われた。
女性はスレンダーでとてもきれいなひとで、お兄さんは筋肉系イケメンだ。
後日知ったけど、女性は中村真理さんで弁護士、お兄さんは誠さんで自衛隊員で2人は男女の双子だとのこと。
真理さんは元依頼人からストーカーされていて、お兄さんや自衛隊仲間が真理さんのボディーガードをしていたらしい。
ストーカーが姿を見せなくなったので、安心していた矢先のできごとだったとか。
とりあえず真理さんが無事で良かったけど、お弁当が最悪なことになっていることに気がついた時は、あのストーカーの頭を本気で潰したくなった。