恋のはじまり

お坊ちゃま、いやらしすぎです

あたしは一家の大黒柱だ。

ある日あたしと母を置いて父は失踪した。

まだ幼かったあたしと妹はみんなから誹謗中傷を浴びせられ、

パートで働いていた母はうつ病を患い、

一家は暗黒を迎えた。

父が残したものと言えば、借金。

しかも四桁という、膨大すぎる借金。

取り立てが来るのは困るので、身をひそめるようにと言われる日々。

けれども知り合いの自宅を回っていては迷惑だからと言い、母は住み込みが良いと言われる大手会社のメイドをすることになった。

その一室であたしは家族三人で暮らしている。

幸いにも母は主婦歴もあったので、仕事内容に関しては慣れていた。

そして高校をあきらめたあたしには通信制の高校に通うようにと母から言われた。

そんなことなら、妹を高校に入れてあげたい。

だから、あたしは内緒でバイトをして、頭の良い妹に奨学金制度を使って高校に行ってほしいのだ。

そのためなら何でもやる。

母はバイトのことを知っているが察して何も言わない。

妹は大好きな勉強を寝るまでしている。

あたしはというと、妹の勉強が終わって就寝するまで眠っている。
………

………
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」

妹には寝る前に起こすようにと言ってる。

「なにーー」

「起きないとお友達から電話が来るよ?」

そう。

「!やっば!!」

お友達=バイト

「やばいーー!今日いつもより遅いじゃん!!」

「ごめーん、ちょっと勉強がはかどっちゃって………」

「じゃ、友達んち行ってくるわ!!」

「いってらっしゃい!」

妹は知らない。

知ったらきっと自分を責めてしまう。

だから、絶対に内緒なんだ。

「ちゃんと寝なよ?」

「うんっ」

…………

…………

…………

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