不倫・禁断の恋

幸福を運ぶカワイイ私のセフレ君

カワイイ弟のような若者に一目惚れ

「こんばんわ、野々村さん、今日はこの後、お時間空いてますか?」

そう言って、ある一人の若者がいつものように屈託のない笑顔で今日も声をかけてくる。

まさか最初に会った時、彼とこんなに深い関係にまで発展しちゃうなんて、

その時は、全く考えてもいなかった。

 

私の名前は、野々村聡美ののむらさとみ

訳あって今は自宅近くの宝くじ売り場で、

毎週月曜日から金曜日までの5日間パート勤務として働いている。

彼、湯浅健一(ゆあさけんいち)君との出会いも、

ここの宝くじ売り場だった。

彼との最初出会いは、

今からちょうど半年ほど前の8月の少し蒸し暑い夜でした。

その日は週末の金曜日で、

50代くらいとおぼしき上司の男性と

仕事帰りに飲みに行った帰りの途中らしく、

何気なく立ち寄ってみたとか。

何だか知らないけど、

何か酔った勢いで宝くじでも買ってみようということになり、

ちょうど目に入ったここの宝くじ売り場に寄ったってわけ。

お酒臭い息で少し絡むような感じで話し掛けてくる男性上司は、ちょっと迷惑な客って感じがして、話している言葉も呂律が回らず、何を言っているかわからない。

そんな困りながらも対応している私の様子を見かねたのか、一緒にいた部下の若い男性が間に入って絡む男性上司をなだめてくれたのです。

「すみません。ちょっと飲みすぎちゃったみたいで、大丈夫でしたか?」

「あっ、い、いえいえ、大丈夫ですよ」

「ほら、社長!しっかりしてくださいよ。ああー、そこで吐いちゃだめですよ!」

そう言った彼は、泥酔で千鳥足状態の上司の男性を介抱しながら、少し離れた駅の方に歩いていきました。

その最初の出会いから1週間後の翌週の金曜日の夜8時頃、売り場を閉店するための後片付けをしていると、

一人の男性が声をかけてきたのです。

「あのー、昨日はどうもすみませんでした・・・」

最終的に売り上げがいくらになったか金額をチェックしていた私が顔を上げると、ガラス越しに昨日泥酔上司を介抱していた部下の若い男性が覗いていました。

「ああー、昨日の。全然気にしてませんから、そんなに謝らなくてもいいですよ」

彼は申し訳なさそうに、何度も何度も頭を下げてくれたのです。

「あの後は上司の方は大丈夫でしたか?今にも吐いちゃいそうでしたけど」

「あはは、何とか駅のトイレまで吐かずに間に合いました。

もう途中で吐いちゃうんじゃないかと本当にヒヤヒヤしましたよ」

ようやく彼の恐縮した硬い表情が、不安から開放されたようなホッとした表情へと変わってきました。

「ご迷惑をかけたので、何枚か宝くじを買わせてください」

そう言って、彼はスクラッチのくじを10枚買ってくれました。

すると、驚いたことにその中の1枚のくじで2等が当たったのです。

「おめでとうございます。2等の5万円が当たりましたよ」

「えっ、あっ、本当だ、2等が当たってる」

当たりくじと引き換えに5万円を彼に渡した時のことだった。

「あのー、せっかく5万円も当たったので、もしよろしければ、一緒にお食事にでも行きませんか?」

突然の彼の誘いに私は一瞬驚きました。

「いや、そんな、いいですよ。せっかく当たったんですから。私みたいなおばさんなんかと食事なんてもったいない」

「いいんですよ。もっと昨日のお礼をしたいですから。ねっ!いいでしょ?」

彼のキラキラとした真っ直ぐにこちらを見るキレイな瞳に、私は不覚にもドキッとしてしまい、年甲斐もなくお食事に行く約束をしてしまったのです。

「それじゃあ、来週日曜日の夕方6時頃、そこの駅の改札口の前で待ち合わせましょう」

「えっと・・・、あ、はい、来週日曜日の夕方6時頃ですね。わかりました」

「あっ、そうそう、自己紹介してなかったですね。僕は湯浅健一と申します」

「野、野々村・・・聡美、です」

「聡美さんって名前なんですね。じゃあ、きっとですよ、聡美さん」

「えぇ、必ず・・・」

そう約束を交わし、その日はそれで別れました。

男の人とお食事に行くなんて、一体何年ぶりだろうか?

「大きく当たりますように。ありがとうございました」

といつもの言葉をお客さんにかけながら、ふと頭の中で考えていました。
………

………
私の休日の過ごし方といえば、女っ気なんてない。

パート仲間と近くの居酒屋に行っては、お気に入りのイケメン男性店員の笑顔を見て、その後別れて一人カラオケで20曲くらい歌って帰るのがいつものコースだった。

そんな女っ気がほとんどなくなっていた私に嫌気が差したのでしょうか。

まるで50歳になるのを待っていたかのように旦那に離婚を切り出され、私は惰性的だせいてきに続けていた結婚生活にピリオドを打つことにした。

そして、知人に紹介された今の宝くじ売り場のパートとして再就職。

週5日の宝くじ売り場でのパートの仕事にも慣れてきた。

でも、生活が落ち着いてくると男性の体が恋しくなってきて、夜な夜な一人、右手で自分を慰めては、むなしい気持ちに陥っている。
………

………
そんなある日、彼と出会ったというわけです。

お食事の約束をした翌日の土曜日、休日に書店に向かっていると、前方からどこかで会ったことがあるような男性が歩いてきました。

誰だかわからず考えていると、先方から会釈された。

慌てて私も会釈を返した。

行き過ぎた時に、はと思い出した。

先日宝くじ売り場で出会ったあの若者、健一君だ。

向こうも私が宝くじ売り場の女性だと気付いたようです。

どうやら、宝くじは彼の家の近くにある売り場では、週に2、3度購入しているらしい。

だから、元々宝くじには興味があったようで、実は以前からよく当たるという噂を知り、私の働く売り場のことが気になっていたとか。

眼鏡をかけていたのと、仕事着のスーツ姿ではなかったので、すぐに気付くことができなかったのです。

「えっと、確かお名前は・・・野々村聡美さんでしたよね?」

と彼はニコッと笑いながら答えました。

名前をちゃんと覚えていてくれて、何だかちょっと嬉しかった。

意外と知られてはいないけど、宝くじ売り場では、

それぞれの店員には、なぜだかファンが付いているのです。

そして、こんな私のような者にも、

「あなたがいない時は買わないんだよ」

と嬉しそうに、そう話してくれるお客さんが何人かいます。

でも、そのほとんどが老人の方ばかり。

だから、彼のような若い男性が私をお食事に誘ってくれたことで、

もう私の心はかなり舞い上がっていました。

彼の容姿は十人並みだがカワイイ弟タイプで、

人当たりが柔らかく、癒やし系タイプである。

そんな彼に少しずつ心が惹かれていく自分がいた。

いや、正直に言うと、最初に出会った瞬間に一目惚れしてしまっていたのだ。

「来週の日曜日の約束、楽しみにしてますからね。予定大丈夫ですよね?」

「うん、大丈夫だわ。ちゃんとスケジュール空けておくから」

「それはよかったです。
それじゃあ、僕はこれからちょっと用事があるので、これで」

せっかく偶然ばったりと出くわしたんだけど、

この時はグッと我慢して、彼とはその日はそれで別れたのでした。

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