「返却期限は一週間です。過ぎると延滞料金かかりますのでご注意ください」
お決まりのセリフを口にしながら、萌香はレンタルDVDが入った黒い布袋を客に手渡した。
閉店も近いというのに、まだ本日二度目の来客である。
店番はバイトの
「DVDよりネット配信のが便利だもんねぇ」
独り言ちながら、一人目の客が返却したDVDをキュッキュと磨く。
「やっぱお店潰れちゃうのかな。ここ、ラインナップもマニアックだし」
このお店気に入ってるから、できればバイト辞めたくないな。
萌香がそんなことを漠然と考えていると、シュッ、と自動ドアの開く音がした。
「いらっしゃいませ……あ」
来た!店に入ってきた客を見て、萌香は密かに胸を高鳴らせた。
奥の棚に向かう客の背を目で追う。
ひょろりとして背が高く、黒縁の眼鏡に、薄くて疎らな
だるだるのジャージに、ボサボサの頭。
伸びた髪を後ろで適当に結んでいる。
いかにもなダメンズダサ男だ。
「今日なに借りるのかなぁ」
楽しみすぎて思わず声に出てしまった。
慌てて口を
客は萌香の声には気付かなかったようで、足を止めることなく奥の棚に直進した。
ソワソワしながら、彼がカウンターにやってくるのを待つ。
いけないと思いつつも、今まで彼が借りたDVDのレンタル履歴を、店内用端末でちらっと確認した。
全部萌香が受付けたものだ。
――
あんな見た目で、問題定義作を借りたり、ワンちゃんネコちゃんが活躍するファミリー映画を借りたり……なんてことはしない。
彼は見た目通りにエロいDVDを借りていく。
というか、むしろそれしか借りて行った事がない。
「この前レンタルしたのは、えっと……そうそう、『鬼畜!バイトのあの子を即ハメレイプ☆』だ」
ついでに『スペルマ乱舞~失神しても終わらない。連続強制絶頂24時~』も借りて行った。
その前の週は『ガン突きレイプ連続中出し10連発』と『ミッドナイトシリーズ~閉店後に忍び込んで店員を犯す~』だった。
『強制交尾!2穴プレイで悶絶絶頂』はその前の週に借りている。
このなんとも趣味が分かりやすいラインナップを見て、気が付いたことがある。