(でも今日は‥‥‥)
お世話になってる先輩だし、残業を引き受けてくれたりしてくれる先輩。
あたしはそれを甘んじて受けようと決めた。
あんな家なんかどうでもいいわ。
何を怖がっているんだろうね、あたしは。
一瞬でも自分の保身に入りそうで醜く感じる。
でももう知らんわ。
………
………
「
「‥‥‥え?だめよあなたには門限が‥‥‥」
「いいんです。いつもありがとうございます。けど今日は大丈夫です!」
「ありがと‥‥‥うわあああん!!!」
「ちょ、先輩待って、休憩室に行きましょう!!??」
あたしは先輩をかぶって休憩室を目指した。
「‥‥‥あれ?咲?」
そこであたしはなんと、まなぶとすれ違ったことを気づかなくて、
この時にあたしの選択が間違いだったと気づかされることになるとは、
思ってもいないんだ。
結局、休憩室から出たのは19時36分だった。
着歴を見ると、ありえないくらいの着歴と留守番電話の数々。
恐ろしく思った。
だけど帰る場所はあの家しかない。
だから今行くしかないんだ!
「え‥‥‥」
会社を出れば、土砂降りの雨。
会社の玄関先を見れば、そこには傘をさしている、
「あ‥‥
旦那がいた。
「‥‥‥」
その沈黙が怖い。
身体が震えていることにあたしは気づいた。
でもあたしは何もしていない。
「遅いね。迎えに来たんだ。一緒に帰ろうか」
「あ、うん、そ‥‥‥だね」
周囲にも残っていた同僚がいて、すれ違うたびに旦那の亮ちゃんは挨拶をしている。
………
………
もしかして、前みたいなひどいことはされないのかな‥‥‥。
あれはあの時だし、今回はちゃんとした理由だってある。
なによりあたしは先輩を救うことが出来ればいいと心から思った行動。
それを謝罪という“悪い”理由にしたくないし、するつもりもない。
「亮ちゃん!今日だけどね!!」
その瞬間、ニコニコしていた表情の亮ちゃんはいなかった。
鋭くて身を引き裂きそうなくらいの視線。
「‥‥‥なに?今日はなに?理由は?ルールは?母さんのへのLINEは?何か一つでも俺に説明できるの?人の家族をないがしろにするとか、人としてどう?ねぇ、こんなに言われてどんな気持ち?」
だめだ‥‥‥あたしはまた‥‥‥この桜井家の暗闇に溺れてしまうんだろう。
「ま、亮ちゃん‥‥きき、聞いて‥‥‥」
「何を?謝罪を?俺が許すとでも思うの?なにより大事にしてくれるってあの日誓ったよね?家事しかやってないお前を見かねて会社OKにしたけどさ、また同じこと繰り返すってことは何もできてないクズそのまんまだよ?俺と結婚出来て嬉しがった頃を思い出してもくれないの?」