不倫・禁断の恋

愛がある人に気付かない①

あたしは絶句した。

怖かったからじゃない。

この桜井亮さくらいりょうって言う人間は、こんな狭い世界だけの支配者な訳?

なんであたしはこんなに質問攻めされてるの?

頭に血が上っていくことがわかる。

身体中の熱い熱い血液が、全身をかけめぐった。

意味が分からない。もう抑えられない。

「もういいよ、亮ちゃん。‥‥別れよう」

 

「は?いつそんな話した?意味わかんない話しないでよ。お前なんか行くところもないくせに、一丁前に意見するなよ。第一俺を侮辱して意見するなら、俺の母さんをも侮辱してるんだ。何回も、グサグサとその価値ない人間という固まりの咲に、刺されてる。あーあ、母さんが可哀想。ま、俺も刺されてるけど。治療してくれるよな?」

「‥‥‥もう疲れちゃったよ亮ちゃん‥‥一緒に‥‥‥死んで‥‥‥くれない?」

「はぁ?今度は命がけか。学ばないなぁ。死ぬのは勝手だけど、離婚だけは許さないからな」

なんであたしは‥‥‥意見をいう資格を持っていないんだろう?

そもそも‥‥死ぬ権利しかないんだね。

「わかったよ」

「それでいいんだ。変なこと言うな、行動もするな。なんの意味も持たない底辺のお前が、この稼いでくる俺に敵うものは、塵ひとつないんだ。わかったな?」

「‥‥‥わかった‥‥」

「ならいい。あぁそうだ。この手錠はお前のために持って来てやったんだ。つけてくれるよな?」

「‥‥さようなら」

あたしは耐えきれなくて、その場から走った。

走って、走って、あたしはとにかく雨の中走った。

後ろからは意外に誰かがあたしに追いつこうとしている。

怖いよ。ダメだよ。こないで。もうこんな人生嫌なの。

「っひ、っく」

ばしゃっとあたしは水たまりの中で転んだ。

靴も、服も、何もかも汚れている。

「‥‥汚れてる‥‥‥?あたし自身が汚れてるくせに、なんであたしよりも汚いの‥‥‥?っあ‥‥‥はははは!!なにこれ!!ははっ、はは‥‥‥」

 

………

………

………

「咲」

「!!!」

あたしは振り返った。

「あ‥‥‥」

「咲‥‥」

そこにいたのは、幼馴染のまなぶだった。

「おい、咲‥」

「来ないで‥‥来ないで!!!!!!」

あたしにある選択肢は、死しかない。
………

………
「来たら‥‥‥あたし飛び降りる」

「ダメだ」

「もういらないから。こんな生活も、何もかも、いやなの」

「咲」

「あたしはもうダメなんだ!逃げられない!!こんな人生いらない!!」

「聞けよ咲」

「なにさ!!!」

「おいで、さっちゃん」

それは、懐かしい呼び方だった。

まなぶと一緒にいた中学までそのあだ名だった。

そのあだ名はまなぶがつけたらしい。

懐かしい感情があたしに渦巻き始める。

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