あたしは絶句した。
怖かったからじゃない。
この
なんであたしはこんなに質問攻めされてるの?
頭に血が上っていくことがわかる。
身体中の熱い熱い血液が、全身をかけめぐった。
意味が分からない。もう抑えられない。
「もういいよ、亮ちゃん。‥‥別れよう」
「は?いつそんな話した?意味わかんない話しないでよ。お前なんか行くところもないくせに、一丁前に意見するなよ。第一俺を侮辱して意見するなら、俺の母さんをも侮辱してるんだ。何回も、グサグサとその価値ない人間という固まりの咲に、刺されてる。あーあ、母さんが可哀想。ま、俺も刺されてるけど。治療してくれるよな?」
「‥‥‥もう疲れちゃったよ亮ちゃん‥‥一緒に‥‥‥死んで‥‥‥くれない?」
「はぁ?今度は命がけか。学ばないなぁ。死ぬのは勝手だけど、離婚だけは許さないからな」
なんであたしは‥‥‥意見をいう資格を持っていないんだろう?
そもそも‥‥死ぬ権利しかないんだね。
「わかったよ」
「それでいいんだ。変なこと言うな、行動もするな。なんの意味も持たない底辺のお前が、この稼いでくる俺に敵うものは、塵ひとつないんだ。わかったな?」
「‥‥‥わかった‥‥」
「ならいい。あぁそうだ。この手錠はお前のために持って来てやったんだ。つけてくれるよな?」
「‥‥さようなら」
あたしは耐えきれなくて、その場から走った。
走って、走って、あたしはとにかく雨の中走った。
後ろからは意外に誰かがあたしに追いつこうとしている。
怖いよ。ダメだよ。こないで。もうこんな人生嫌なの。
「っひ、っく」
ばしゃっとあたしは水たまりの中で転んだ。
靴も、服も、何もかも汚れている。
「‥‥汚れてる‥‥‥?あたし自身が汚れてるくせに、なんであたしよりも汚いの‥‥‥?っあ‥‥‥はははは!!なにこれ!!ははっ、はは‥‥‥」
………
………
………
「咲」
「!!!」
あたしは振り返った。
「あ‥‥‥」
「咲‥‥」
そこにいたのは、幼馴染のまなぶだった。
「おい、咲‥」
「来ないで‥‥来ないで!!!!!!」
あたしにある選択肢は、死しかない。
………
………
「来たら‥‥‥あたし飛び降りる」
「ダメだ」
「もういらないから。こんな生活も、何もかも、いやなの」
「咲」
「あたしはもうダメなんだ!逃げられない!!こんな人生いらない!!」
「聞けよ咲」
「なにさ!!!」
「おいで、さっちゃん」
それは、懐かしい呼び方だった。
まなぶと一緒にいた中学までそのあだ名だった。
そのあだ名はまなぶがつけたらしい。
懐かしい感情があたしに渦巻き始める。