……と、そんなことが切っ掛けになって、椎名くんは私に心を許してくれたようだった。
部活以外でも、私を見かける度に先輩先輩とよく声をかけてくれ、休み時間などは懐っこいワンコのように後をついてくる。
人と比べて背が低めの私と、人と比べてかなり背が高い椎名くんとの組み合わせは、良くも悪くも校内では目立ち、いつの間にか「飼い主と飼い犬」としてセット扱いされるようになってしまった。
先輩こんにちは、先輩一緒にお昼食べたいっす、先輩帰りどっか寄りませんか、先輩今日もかわいい、先輩その髪型いいっすね、先輩、先輩……。
ニコニコしながらついて来る椎名くんを、私も憎からず思ってはいた。
部活も頑張るし、成績もいいし、見た目もいいし、遠慮はないけど気は遣えるし、何よりこんなに慕ってもらったら悪い気はしない。
だから、部活の帰り道で突然立ち止まった椎名くんが、いつもとは違う真面目な顔で私を見つめてきた時だって、拒否しなかった。
「先輩、俺……先輩のこと好きです。付き合ってください」
「いいよー」
散歩をせがむワンコに応えるような、怪獣ごっこしようと言う小さな子に応えるような、そんな気分であっさりと、私は彼の告白を受け入れていた。