恋のはじまり

営業×営業

「あっはっはっはっはー!!」

時間は過ぎ、夜の社員寮。

あたしは隣部署の同室の友達、夢子ゆめこに話をしていた。

「そんなに笑うこと!?」

「これはこれは、反感しか生まれませんな!」

「夢子ー。代わってー」

「代われるなら代わりたいわよ」

「でしょ!?」

「そうだよねー。ま、ファイト!」

「えぇーー‥‥‥」

「ねぇねぇ、それより進展させてきなさいよ!!」

目をきらっきら輝かせている夢子。

楽しんでるしか受け取れない。

「社内のプリンスと二人きり旅行よ!?アンタ下着買いに行くよ!」

「なんでそうなるかなぁ‥‥‥」

「両想いになってほかの女たちにマウントとってやんなさいよー」

「やーだ‥‥え?」

いや、聞き逃さなかったよ!

「まだおこちゃまなの?恋愛初心者さん」

あたし‥‥‥

そっか。

ショックだったんだ。

そしてあの日、あたしは彼を嫌おうと決めたんだ。

「‥‥‥おやすみ」
………

………
あたしは思い出した。

すっかり忘れていたが、あたし‥‥‥心のどこかでうれしがってるな。

そう、あの日というのは、数か月前。

忘れ物をして取りに自分のデスクに向かった。

けど男性陣が集まっていたので入るには入れず立ち往生。

そうすると声だけが聞こえてきた。

「やっぱ一ノ瀬さんはかわいいよなー」

「だなー。」

あたしのこと!?

うわ‥‥‥ってか村城さんがいる!!

「見る目ないな。絶対に一ノ瀬さんはやめとけ。絶対うるさそう」

‥‥‥え‥‥‥

今の発言は本当に村城さん?

あたしを‥‥‥うるさいって‥‥‥

あたしはその日、いてもたっても入れずに立ち去った。

全速力で走って、寮に帰る。

その道は涙で見えづらかったことを覚えている。

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