最近、疲れが寝ても取れない。
肩こり、腰痛、眼精疲労……。
私、
潤いのない毎日に、そろそろ腰も心もバキッといきそうだな、と思っていた。
「身体のメンテナンスは大切だよぉ」
と先輩の先輩が進めてくれたこともあり、今日という今日は覚悟を決めた。
「……よし!」
拳を握った私の手には
『初回限定二〇%オフ!非日常的な空間で最高のひと時を』
と書かれたクーポン。
私は人生初のエステを受けるために、意気揚々と階段を登った。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
美人な受付嬢に出迎えられ、がちがちに緊張していた私は出されたカモミールティーを口にしながら問診票を埋めていく。
(……ん?モニターキャンペーン?)
クーポンを持っているとはいえ、ここは高級エステ店。
少しでも安くなるに越したことはない。
「あの、すみません、このモニターのことなんですけど……」
受付のお姉さんに声をかけると、彼女はにっこりとほほ笑む。
「ご興味がありますか?」
「はい。でも、私エステって完全に初めてなので、モニターに手を挙げてもよいものかどうか……」
「それはご心配なさらずとも大丈夫です。どんなお客様にも満足いただくためのモニターですから。このキャンペーンでは、ベテランのエステティシャンと新人を二名付けます。ご満足頂けないところをお話しいただけますと、それが成長の元にもなりますので大変参考になります」
ただ、と彼女は少し言いよどむ。
「本日ご案内できますのは二名とも男性となります」
「あ、それは問題ないです」
むしろ好都合だ。
私の岩のような肩こりは整体の先生が
男の人ならオーダーすれば遠慮なくごりごりしてくれるかも、と期待が募る。
「モニター、受けたいです」
私は問診票に〇をつけて提出した。
受付嬢は相変わらずきれいににっこりとほほ笑んだ。
「はじめまして。本日担当させていただきます、原田と申します。よろしくお願いします」
施術用のガウンに着替えたところで、個室に入ってきた担当者はなかなかのイケメンだった。
渡された名刺には整体師の他、様々な資格が書かれている。
背が高くて肩幅がしっかりしているせいか、エステティシャンというより整形外科医っぽい。
高い
このエステ、顔面偏差値が高い。
「以前腰を痛めたことがあるとのことなので、今日はコリをほぐすことをメインにしていきましょうか。オイルトリートメントの後、むくみを取るためのリンパドレナージュ。老廃物の流れを良くした後に、肌をきれいにするためのスペシャルクリームでマッサージ、という流れがおすすめです」
「あ、じゃあそれでお願いします。肩、すごく凝っているので、できれば強めでお願いしたいのですが……」
「承知しました。オイルをいくつかお持ちしますので、好きな香りをお選びください。……それと、初回限定でマッサージの追加延長も可能です。一通りの施術がすみましたら再度問診いたしますので、なんなりとお申し付けください」
ここまでのやり取りで私の心はめちゃくちゃ踊っていた。
スタッフの雰囲気も店内の優雅さも最高で、もう一生ここにいたい。
さすが高級エステ。
そんなアホなことを考えていたら入室のベルが鳴った。