「そういえば、映画も音楽もかなり種類あるので試しになにかって仕事でしたね」
「いいね。俺は営業だから、会社戻るのも自由だからさ」
「ではでは、選んでてください。今冷えたお茶持ってきます」
「ありがとう」
こんなに楽しい時間があるとは。
会社早退してラッキー!
ちゃぷ、とコップ一杯に入れて手で持って我妻さんがいるリビングに向かった。
我妻さんは真剣な表情で音楽を、YouTubeで選んでいた。
その姿がかっこよくて、素敵で、なんだかのめりこみそうだった。
まぁ顔はタイプの塩顔だし、身長も悪くない。
…………ってあたしは何を考えてるんだ。
気が付けば少しだけそんな空想を考えていた自分に恥ずかしくなって赤くなる。
「我妻さん。いかがですか?」
コト、と麦茶をガラステーブルに置いた。
「これなんかどう?」
我妻さんが見つけたのは、
「アリアナグランデの………POV、ですか?」
「そ。俺の妹がアリアナのファンでさー。あんまり聴いたことなかったからさ」
「名曲です!聴きましょう!」
そしてあたしはPCから曲を流した。
二人並んで座って、お茶を飲みながら聴いていた。
そこで提案をする。
「あ、この音楽って本当にきれいで素晴らしいので、ぜひ目をつぶって聴いてみてください!」
「そう?」
そう言ってからあたしは目を閉じた。
「どうですかー?なんだか心地いいんです。落ち着きます」
「確かになー」
「…………この曲には思い入れがあるんです」
「ん?」
「両親を交通事故で亡くした時です。家族は誰もいなくなって、孤独になって……」
「うん」
「でも外を歩いているときにこの曲を聴きました。そうしたら優しく包み込んでくれるような音質で、心地よくって落ち着きました。だから、この曲を聴くのは、あたしが疲れているときなんです」
「…………そっか」
「すみません重い話に―…………」
目をぱっちりと開けて、隣に座っていた男性に話しかけると、目の前に顔があった。
「!!」
「よしよし」
あたしの頭を撫でてくれた。
それだけ。
だけど今までのあたしを肯定してくれている気がして、心がポカポカした。
赦されたんだって。