ラブラブ

花火のあとで…

「あー、楽しかったね、こうちゃん」

私がそう言うと、彼はにっこりと笑った。

蒸し暑い夏のイベント。

今日は花火大会へと足を運んでいた。

彼とは、職場で出会った。

部署が違うため、職場では時々しか顔を合わせることはなかった。

ただ、お互い新入社員だということもあって、飲み会の機会は多くあったと思う。

「そろそろ帰ろうか、真希まき

入社して少し経った頃、付き合って欲しいと告白してきたのは彼だった。

私も少なからず彼のことは気になっていて、なんの迷いもなくその告白を受け入れた。

彼に手を引かれ、少し混雑している改札を抜ける。

電車の中はそれなりに混んでいて、お互い離れないようにと手を握り合う。

その温もりが、少し心地よく感じた。

「すっかり遅くなっちゃったね」

外は日も落ちて、街灯の光が路地を照らす。

向かうのはーーこうちゃんの住むアパート。

何度か遊びに行った事はあっても、泊まるのは初めてのことだ。

「何か飲む?」

「じゃ、じゃあ……麦茶で」

慣れた部屋だと言うのに、どこかぎこちない態度になってしまう。

これでは意識していないと言う方がおかしい。

交際から約3ヶ月。

こうちゃん、こと、孝一こういちとは、まだ一線を越えたことがなかった。

おまけに、

――これは、孝一にも話していないのだが、私はまだセックスをしたことがない。

動揺は、隠しきれなかった。

「ふぅ」

短くため息をついて、ソファに座り込む。

程なくして、孝一も隣に座った。自分の胸の音が速くなっていくのを感じていた。

何とも言えない沈黙が2人を包んだ。

ちらりと孝一の表情を盗み見る。

その顔はどこか緊張しているように見えて、何故か安堵した。

自分ばかりが早とちりしていては気恥ずかしいという気持ちがあったからだろう。

「こうちゃん、さっき酎ハイあったよね!折角だから宅飲みしようよ!」

「えっ、ああ、そうだな。それもいいな」

私が突然声を上げたものだから、孝一も少し驚いたようだ。

そのままキッチンの冷蔵庫から缶酎ハイを手にして戻ってくる。

「好きな方、選んでいいよ」

「どっ……どっちでも……」

言いながら、レモン味の酎ハイを手にする。

勢いづいた自分が少しだけ恥ずかしかった。

かしゅっ、とそれぞれ音を立てて缶をあける。

炭酸の喉越しがやけに気持ちよく感じていた。

半開きになっている窓から、時々心地よい風が吹いていた。

「あっ、そうだ、シャワー……」

借りていいかな。

と言いかけた所で、孝一が私の腕を掴む。

思わぬリアクションに、私の胸はまたも速く鼓動を刻み始めた。

1 2 3 4 5
RELATED NOVEL

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。