「えっ?」
男性が試着室に入るなんて、大丈夫なのだろうか――それとも、恋人同士できている客ならいいのだろうか?
彩乃が一瞬、考えている間に雅史は近づいてきた。
しー、と口元で人差し指を立てる。
ということは、やはりこっそり入ってきたのだろう。
「どっ、どうしたの?」
焦る彩乃の姿を見て、雅史は嬉しそうにほほ笑んだ。
「よく似合ってる、すごくかわいい」
そう言われて、嬉しくなってしまう。
「そ、そうかな……」と照れ笑いしながらも、彩乃は雅史によく見えるように鏡の前でくるりと回って見せた。
「あ、ていうか、だめだよ入ってきちゃ……」
「なんで?だって、俺の誕生日プレゼントでしょ?」
「そ、そうだけど……」
明確に禁止されているわけではないだろうし、店員にも見つかっていないようだ。
それに、確かにこれも雅史の誕生日プレゼントなのだから、出ていってと言うのもはばかられた。
彩乃がどうしようかと困っている間にも、雅史は彩乃に近づいてくる。
「かわいい、ちょっとだけ触らせて?」
「えっ、ちょ、っと」
鏡に背中が当たるまで試着室の隅に追いやられて、雅史の手が、彩乃のブラジャーをそっと触った。
黒いレースに包まれた胸を、雅史の掌がゆっくりと円を描くようにして揉み始める。
驚いて声を上げようとした彩乃に、雅史が「しー」と子供に言い聞かせるようにして笑った。
確かに、今ここで声をあげては周りにばれてしまう――。
「ちょっとだけ、ね」
「あ――」
耳元でささやかれて、ぞくりと背筋がしびれた。
雅史の手が優しく、しかし性感をあおるような動きで乳房を刺激する。
ブラジャーを傷つけないようにそっと、胸の頂のあたりをさするようにして刺激されると、じわじわとした快感が彩乃の身体をゆっくりと駆け抜けていく。
「だめ、こんなところで……」
このままでは、自分もその気になってしまいそうだ。
彩乃が雅史の胸を軽く押して、やめさせようとする。
その手を無視して、雅史の指先がブラジャーの上から忍び込んできた。
柔らかい乳房の真ん中の、少し硬くなり始めた乳首をきゅうっとつままれる。
その瞬間、甘い快感に身体が小さく震えた。「あっ」と吐息まじりの甘い声が彩乃の口からもれる。
「だめ、ってばあ……」
耳元に雅史の唇が当たり、熱い吐息にぞくぞくした。
耳朶を食まれ、舌の先で耳をくすぐられる。
もう片方の乳首がつままれるのと同時に舌が耳の中に差し込まれて、水音が鼓膜を震わせた。
ぴちゃ、と粘着質な水音と、あたたかくてぬめった舌が彩乃の身体を昂らせていく。
「だめ、ね、ここじゃ……っ」
なんとか抵抗しようと再び胸をぐっと押したが、耳元で「俺、今日誕生日だよ?」とささやかれる。
「彩乃が声出さなかったらバレないから……」
そう言われて乳首をはじかれ、下腹部がきゅんと疼いた。
硬くなった乳首をこねられ、先端を優しく撫でられて、じれったいような快感が下腹部へと下っていく。
手を引かれ、雅史の下腹部へと導かれる。
ジーンズの上から触ったそこは、すでに熱く、硬くなっていた。
「はっ、ん……」
胸をもまれ、乳首をつままれ、身体の熱がじわじわと上がっていく。
だめだとわかっているはずなのに、撫でるたびに感じる熱に、彩乃の手は止まることが出来ない。
雅史の吐息が耳元を撫で、身体はすっかりその気になってしまっていた。
雅史の手が彩乃の背中に周り、ブラジャーのホックを外される。
まだ会計も済ませていない黒のブラジャーをそっとかごの中に入れると、二人は試着室の床へと腰を下ろした。