マニアック

変態小説家

私がT先生を知ったのは、今から二年程前、地元の高校を卒業して大学に入った、その年の夏休みだった。

それまで私は全く本を読まなかった。

それは子供特有の早とちりな判断の為で、読書なんかしなくても生きていける!と思っていたのだった。

私は小学生の時から国語が苦手で、行事や夏休みなどで書かされる感想文も大ッ嫌いだった。

しかし高校を卒業して上京の準備をしていた初春頃、一体何を見聞したのか覚えていないのだが、何かに触発されて、大学生になったら本をたくさん読むと決心した。

それから上京するまでの間、色々時間を見つけて父の書斎にある、割に簡単に読めそうな小説を勝手に持ち出しては読んでいた。

父はそれを知っていたが、特に何も言わなかった。

その間に、私は四冊程の小説を読んだ。

その内の一冊が、T先生の書いた「峰子の脚」という題名のものであった。

内容は、とても淫靡いんびでエロティックなものだった。

大学受験を控えた一人の青年が、ある日の放課後、学校の図書館で勉強をしている。

不図、顔を上げると、目の前に非常に美しい女性が自分の汚れたノートを覗き込んでいた。

その女性は生徒でない事が明らかで、如何にも大人という感じだった。

しかし彼には全く見覚えがない。

暫く二人は見つめ合って、女性は可愛く微笑むと、その場を出口の方へ離れて行ってしまった。

彼は女性の華奢な背中が見えなくなるまで、じっとそれを見つめていた。

彼は知りたかった。

一体彼女は何者なのか、と。

それ以来彼の頭は、あの日の彼女の美しい顔が占領してしまった。

彼の頭の中の女性は、優しく笑っていた。

それから二人の奇妙な関係が始まる。

青年は、その不思議な女性に連れられて、学校のトイレや誰もいない教室で、セックスをする。

彼は何度も何度も、自分の疲れ切った心を優しく包み込んでくれる彼女の懐に、甘えた。

その女性は全てが完璧であった。

そして特にすごかったのは、その長く綺麗な脚であった。

腰掛けた全裸の彼女の足元に膝を付き、彼は必死にその脚に抱き付いて貪るように舐めた。

上から甘美な喘ぎ声が聞こえる…。

少々長くなってしまったが、こんな事が書かれていた。

私はこれが好きだった。

その理由は、ちょっと上手く説明できない。

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