マニアック

変態小説家

T先生の舌が膝の方へ一直線に這って行く。

それから膝を通過して、膝とスネの境目辺りで止まった。

T先生は脚から顔を離すと、私の右足を掴み、それを持ち上げた。

持ち上げたまま、T先生はその下に潜り、ふくらはぎの最も柔らかい部分を舌先でグリグリと押し込んでくる。

T先生の鼻息が聴こえて来る。

間もなくT先生はふくらはぎ全体を舐め尽くしてしまって、下から顔を出すと、今度は私の足裏を舐めだした。

T先生はとにかく必死であった。

T先生の顔が上半分だけ、私の足先から覗いている。

T先生は一切私の目を見なかった。

T先生の舌が上へ這い上がって来て、端の小指をペロペロと舐めだした。

時折指の間に舌が入り込んで来て、ヒヤッとする。

それから指の一本一本を丁寧にしゃぶり尽くして、私の右足はT先生の涎に濡れた。

まるで餌を食べる犬のように懸命に足の裏を舐められて、私の心にある妙な感情が湧き出て来た。

それは快感であった。

肉体的に受ける快感とは少し違った、それは精神的な優越感であった

私は西洋の淫乱な女王を想像した。

華やかな装いをした若い女王が美男子な奴隷に自分の足を舐めさせる、そんな想像だ。

T先生は私の右足を大事そうに両手で抱えながら、じっと私の顔を見詰めていた。

目が合った。

その時私は、彼の顔を思いっ切り踏んづけてやりたくなった。

それは怒りではなく、自分の性的欲求を満たす為であった。

私の足と床に彼の顔が挟まれて、しかし彼は私の足裏を何が何でも舐めようとする。

私はグイグイと押し付ける。

そうすると、彼は喜ぶだろう。

「真菜実ちゃん、漸く気付いたね、自分の本性を」

彼はそう言って不気味な笑みを浮かべた。

私は少し腹が立った。

なぜこの男は、そんなヘラヘラした態度で、軽々しい口調で私に話し掛けるのだろう?

そうだ、お仕置きをしてやらねば。

………

………

………

私は持ち上げられた右足をグイッと伸ばして男の顔を蹴った。

男は突然の蹴りに後ろへ倒れた。

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