ーーこれ、私へのメッセージじゃない?
そう思った日から、萌香は彼を観察してみることにした。
すると、やはり萌香をちらちら見ている。
話したそうな素振りをしたり、レンタルした後もしばらく店の前で佇んだり、とにかくこれは、やはりメッセージだと確信した。
なにそれめっちゃヤバくね?
やばたにえんのぴえん春雨じゃん?
そう確信した瞬間、私は思った。――次のバイトの日は、閉店したあと鍵開けとこ……と。
「はぁ、ドキドキしてきちゃった。早く閉店時間にならないかなぁ」
実は、彼が借りていく全部のDVDが、萌香の性癖にドンピシャ超絶クリティカルヒットなのだ。
萌香がされてみたいことを網羅していて、こんなに趣味が合う人いたんだ……とキュンキュンした。
よく見れば無精髭も可愛いし、ギャルめの私と比べればオジサンだけど、なんかそこもいい。
色白ギャルがオジサンに犯られちゃうのってめっちゃエロくない?などと思って、萌香はドキワク胸を高鳴らせる。
ビッチではないが、貞操観念は薄い。
けれど複数人と寝る訳でもない。
少しでも「いいな」と思った相手とは、付き合うまでと性行為に至るまでのハードルがものすごく低いが、長く付き合うのは苦手で、もし長く付き合えたら結婚するまで、もちろん結婚後もずーっと一途!萌香はそんな感じだ。
「……お願いします」
「あ!はーい、ありがとうございます」
待ちに待ったレンタル受付である。
今日は何かな、と店内用のカゴに入れられたDVDを見やる。
おお……今日なんか多くない?
やる気満々ということか。
萌香は営業用でないスマイルを満面に浮かべた。
「お預かりします、DVD四枚ですね。えっと……『悔しいのに気持ちいいの』と『ハメられた女子高生』と『口もあそこも全部いじめて』と『こんな所で、ダメ…』の四枚でよろしいですか?」
「ハイ……。す、すみません、後ろのDVDから順番につめてもらえますか……すみません……」
あーん、この気まずそうな返事と意味分かんないこだわり、たまんない!
めえ子はニコニコしながらDVDを袋に詰め、大人しく待っている客をチラリと見た。
そして、カウンターの下に用意しておいたDVDを取り出す。
「あの……」
「えっ!?」
萌香に初めて話しかけられたからか、動揺しすぎて挙動不審になっている客に向かって、にこっと笑いかける。
用意しておいたDVDを客に差し出しながら、タイトルを指差してみせた。
「このDVD、お薦めなんです。サービスしますので、良かったら観てみてくださいね」
「え……この『はしたない私をイジメてください』と『嫌なのに嫌じゃない~ドキドキ☆秘密のえっち体験~』をですか?っ、あ、ありがとう」
「はい!袋に一緒に入れときますね」
「う、うん」
こくこく
萌香は布袋を手渡しながら、これは絶対今日襲いに来るでしょ!と胸の中でガッツポーズを決めた。
「今日は21時には閉店なんだけど、ドアの鍵はかけ忘れちゃうかもな」
「……!」
ぽつりと呟いてみせると、客は息を呑んで頬を赤らめた。