マニアック

怪しい内科でお注射

しかし……

 

「胸の音、聴きますね」

 

そう言って私のシャツをまくり上げ、ブラジャーが丸見えになった。

何か言おうと思ったが、そんな気力もない。

「あっ……」

火照った身体に聴診器を当てられると、その冷たさに思わず声が漏れた。

医師は何度か角度をかえて、呼吸音を聴取する。

「体温も測りますね……38.2分。肺やお腹も大丈夫そうなので、普通の風邪でしょう」

「そう……ですか……」

私はやっとの想いで答えるのが精一杯だった。

医師は捲り上げたシャツを戻す事もなく、何やらカチャカチャとした器具の音だけが聞こえた。

「熱が高いので、解熱剤の注射をしましょう。うつ伏せになれますか?」

「うつ……伏せ……?」

「はい、お尻に打ちますから」

お尻に注射と聞いて動揺してしまった私をよそに、医師は私の身体をくるりと返し、あっという間に膝下までショーツを下げた。

「あっ、あの……!」

恥ずかしさから思わず抗議の声をあげる。

しかし、医師には届かなかった。

「動かないでくださいね。痛いですよ」

臀部でんぶにひやりとした感触がしたかと思うと、重い鈍痛が走った。

「いっ、たぁーい!!」

年甲斐もなく、声をあげた。

想像をこえた痛みに、思わず涙目になる。

「はい、おしまいです。頑張りましたね」

そう言って医師は私の後頭部をくしゃりと撫でた。

あれ、なんだろうこの感覚……。

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