しばらく待っていると、ドアが開いた。
「買ってきま……、え、せんぱい……」
「もう私、準備万端だから」
ベッドに寝転んでいる私の姿を見て、彼は絶句してしまった。
私は、彼が買い物に行っている間に服を脱いでおいたからだ。
気分が覚めてしまうのも嫌だったから、全裸になっていやらしい気分を高めていたのだ。
「もしかして、本当に露出狂……」
「ちがうよ!」
本心を言ってしまうのは照れる。
でも、もう全部を見せ合った間柄だ。
今更何を恥ずかしがろうというのか。
「えっちしたいって気持ちを、覚ましたくなかったから……」
「そ、それはずるいです……」
彼の股間を見ると、心なしもっこりしているような気がする。
私の全裸を見て興奮しているのだろうか。
「先輩!」
彼は服を着たまま、ベッドに横たわる私に覆いかぶさってきた。
「好きです」
そして、熱くキスをしてきた。
私もそれにこたえながら、彼の着ている服を脱がせた。
「もう準備万端になりました」
「うわ、ほんとだ」
視線を股間に落とすと、彼のペニスは先ほどよりもたくましく、欲望をみなぎらせていた。
「私がつけてあげる」
「は、恥ずかしいですよ」
「今更何言ってるのよ」
彼が買ってきた箱を開けて、小袋を一つ取り出した。
私は、そこからコンドームを取り出した。
「つけるよ?」
「は、はい……」
彼は私がつけやすいように、ベッドの上に座ってペニスをこちらへ向けた。
私は裏表を確認してから、ペニスの上にコンドームを置いた。そしてくるくるとかぶせていった。
太く、固いそれに、薄く、柔いそれを、かぶせていった。
ゴムが、きっちりと根元まで覆ったのを確認して私は手を離した。
「つけられた、よかった……」
「ありがとうございます」
少し照れ臭い空気。
「じゃ、じゃあ、しよっか」
二人して初めてだからだろう。私たちはぎこちない空気のまま、始めた。
私が横たわり、彼が覆いかぶさるように上に乗った。
そして、ペニスを私の蜜壺の口に沿わせた。これは確か、正常位、とかいう体位だ。
いろいろあるらしいが、私が知っているのは、これとあと一つか二つくらいだ。
「挿れますよ」
「うん」
私たちの声は、お互い震えていた。
彼はゆっくりとペニスを私の中へ滑り込ませてきた。
私の穴は押し広げられていって、彼のものが中に入っていくのを感じた。
「ん、んん……」
思わず声が漏れてしまった。
「い、痛いですか?」
彼の心配そうな声。
私は首を横に振った。
「ううん。気持ちよくて」
「それならよかったです。もし、痛かったら言ってくださいね」
安心したような、それでも心配したような顔。
彼のこういう優しいところがとても好きだ。
「は、入りましたよ」
「うん」
彼のモノが、私中の、奥底の壁に到達したのを感じていた。
体の中に彼が満ちているような不思議な感覚。
これは、きっとこうやってつながっているときにしか感じることができないものなのだろうな、と思う。
「動いてもいいですか」
「うん」
私が頷くと、彼はゆっくりと動き始めた。
くちゅ、という音が聞こえる。私の中からゆっくり彼の欲望が抜けていく。
一瞬、寂しさを覚えるが、すぐに彼がまた入り込んできて、私を満たす。
寂しさと安心が交互に押し寄せてくる。この感覚は癖になりそうだ。もっと彼が欲しい。
そう思ってしまう。
「気持ちいい」
「僕もです」
彼の恍惚とした表情。
彼にも、こんな表情ができたのか、と驚かされてしまう。
私の前では少しなよっとはしているけれど、とてもやさしい顔をよく見せてくれてはいるが、彼だって一人の男だ。
こういう風に、欲望をみなぎらせた表情だってするのだ。
「もっと、突いて」
「はい」
私が言うと、彼はもっと早く腰を振り始めた。
頭がぼーっとする。味わったことのない快感のせいだ。
腰のあたりから、全身に勢いよく、しかしじわじわと響いてくる快感。
頭の先までそれはいきわたっていて、私の体を痺れさせるのだ。
もっと欲しい。それだけがはっきりと感じられる。
「好きだよ」
「好きです」
私は彼の体に下から抱き着いて、キスをした。
上でも下でも、濃厚につながる。
二人の舌が絡み合い、彼のペニスが私のヴァギナをかき乱す。
これがえっちというのか。
これがセックスというのか。
けしからんことだ。
こんなに素敵なものだったなんて、知らなかった。
腰と腰がぶつかり合う音と、私の愛液が溢れ出す音が響いていて、私の部屋はどうしようもないくらいの
「ん、はぁっ!」
私は雷にでも打たれたような快感に襲われた。
これがオルガスムというものか。自分で触ることもほとんどないから、こんな感覚は生まれて初めてだ。
みんながオナニーをして味わっているのは、こんな感覚なのか。
これを知らなかったというのは、人生を損していたかもしれない。
「もしかして、イっちゃいましたか?」
「た、たぶん」
「たぶんって」
彼は呆れたように笑ったけれど、自分でもわからないのだから仕方がない。
「僕も、イっていいですか?」
「もちろん。私だけじゃずるいでしょ?」
「はい」
彼は笑ってから、一度顔をゆがませて、腰の振りをさらに加速させた。
「ん、ん、ん、んぅうう……」
壊れるかと思うくらいの快感の後、彼は私の奥底を突いたままで、動きを急速にゆっくりさせた。
どくどくと彼の脈を感じる。
どうやら彼も絶頂を迎えたらしい。
「はぁ、はぁ……先輩」
「ん?」
「気持ちよかったです」
彼は私の頭を撫でて、そう言った。