と、言うわけで、時は戻って今。
彼は私に覆いかぶさる形で、私を抱きかかえている。
「だめ、ですか」
「だめでは、ないけど」
私がそういうと、
「んんっ!」
彼は強引に私の唇を奪った。
さすがイケメンの唇、という具合に彼の唇の弾力はちょうどよかった(ちなみにキスだけは以前したことがある)。
柔らかすぎず、固すぎず、がさついてもいない。
リップとかもちゃんと塗っているのかな。
「ご、ごめんなさい、強引に」
「い、いや、いいんだよ」
うろたえる健くん。
かわいい。こういうところは、やっぱり年下な感じがする。
今度は私から彼を抱き寄せて、彼の唇を奪う。
そして、次は舌を入れた。
「むふっ」
彼は驚いたように声をあげたけれど、私の舌に応えてくれた。
これは、濃厚だ。
でも、彼の舌の動きは少しぎこちなかった。
「もしかして、キス、初めて?」
「は、恥ずかしながら……」
「うそっ!」
てっきり彼はこういうことはバンバンしていると思っていた。
「いや、だって、ずっと片思いしてたんで……」
「もしかして、私に?」
「はい……」
「それで彼女ができなかったと?」
「そうです」
何それ。
めちゃくちゃうれしいんだけど。
悠斗を交えて三人で遊んでるときに、たまに視線を感じることがあるな、とは思っていた。
けれど、まさかその熱視線が彼からのラブコールだったとは……。
「も、もう一回キス、したいです」
「許可なんていらないよ」
私たちはそれから何度もキスをした。
濃厚に、絡み合うように、何度も。
彼の気持ちが伝わってくるようで、私はとても嬉しかった。
キスを一回するたびに、私たちが恋人になったのだという実感が増していった。
そう、私は今日から健くんの彼女になるのだ。
じんわりと股間が湿っていく。
「ん、ふぅ……」
キスをするたびに彼の舌使いがうまくなっていく。
私と彼の吐息が混ざっていく。
どんどんエッチな気持ちになっていく。
私はもう準備万端なのに、と思って、そこでようやく彼のペニスをいじってやればいいんだということを思い出した。
「あ、咲さん!」
私は彼のズボンの上からペニスを握った。
「触っちゃダメ?」
「だ、だめでは……、ない、ですけど」
照れてる。かわいい。
もちろんズボンの上からだけで満足するわけではない。
私はベルトを外してジッパーを下ろし、パンツの中へ手を滑り込ませた。
「わっ」
私は思わず声を上げてしまった。
「ど、どうしたんですか?」
「あ、いや、何でもないんだけど……」
嘘である。
彼のモノが大きすぎてびっくりしたのだ。
AVで見たことはあったが、本当にこんなに大きい人がいるんだ……。
「こ、こんなの入るかな……」
「どうしたんですか、咲さん」
「え?なんか言ってた?」
気づかないうちに、ひとり言をつぶやいてしまっていたらしい。
恥ずかしさを紛らわす意味も込めて、彼のモノをこすってみた。
「ん……」
彼は、私のすぐ目の前で少し苦しそうに声を上げた。
「い、痛かった?」
「違います」
「じゃあ、気持ちよかった?」
「言わせないでください」
彼はそういうと、今度は私の下半身に手を添わせた。
そして、私の中に指を入れてきた。優しく、しかし着実に、彼の指は私の中に滑り込んできた。
「ふぅん……」
私も思わず情けない声を上げてしまった。
「痛かったですか?」
彼の表情は、明らかに私の答えが分かっている様子だ。
「そんないじわる言うんだ」
「ごめんなさい」
イケメンってすごい。ちょっと微笑むだけでもきゅんとしてしまう。
それからしばらく、私たちはお互いの性器を互いの手で愛撫しあった。
いつも自分でいじってはいたが、それとは快感がまるで違った。
誰かにしてもらってるという事実だけで、すぐにでもイってしまいそうなくらい、気持ちよかった。
しかも、彼はキスこそ不慣れだったが、なぜか手マンはとてもうまかった。
もしかして体の関係の女の子はいたとか?
なんて邪推しそうになったけれど、さっきの純粋そうな表情を思い出して、そんな考えをするのはやめにした。
この子が、自分の気持ちに嘘をついてまで体を慰めようとは、きっと思わないだろう。
付き合って一日目で嫉妬しちゃうなんて、私もどうやらちょっとはかわいい女だったらしい。
「ねえ、健くん」
私は一度、擦る手を止めて聞いた。
「どうしたんですか?」
健くんも、手を止めて答えた。
「したく、ない?」
「えっと……、何を、ですか?」
「察してください」
私が少し頬を膨らませると、健くんの顔は徐々に真っ赤になっていった。
「えっと、せ、セックス、ですか?」
「……」
沈黙は時に、何よりも強い肯定になる。
私はじっと彼の目を見つめて、無言の返事をした。
「しても、いいんですか?」
「ダメだったら自分から言わないよ」
「そ、そうですよね」
お互いに
「あ、でも、ゴム……」
彼が言うので
「そ、それなら、私の机にあるから……」
と、答えると、
「え、持ってるんですか!?」
なんて驚かれてしまった。
「ちょ、声大きい!」
「す、すみません」
幸い、悠斗の部屋からは何も聞こえてこなかったから、きっと何も聞こえていなかったんだろうと思う。
そう思うことにしよう。
それにしても、ゴムを持っている女子高生なんてちょっと淫乱に見えてしまっただろうか……。
でも、ちゃんと理由はあるのだ。
「その、ね、私、一人でするのに使ってただけだから……」
「あ……、ごめんなさい」
「謝られると、より立つ瀬がなくなるというか、なんというか」
「ご、ごめんなさ」
「謝らなくていいから!ちょっと待ってて!」
謝られると傷つくといっても、なお謝ってくる彼の言葉を強引にせき止めて、ついでに私の覆いかぶさっている彼を押しのけて、机の引き出しにしまわれているゴムを一枚とった。
「これ、つけ方は分かる、よね?」
「はい」
「ちょ、ちょっと後ろ向いててもらえますか……?」
「うん」
私が後ろを向くと、衣擦れの音がした。ぬ、脱いでる。イケメンが、私のすぐ後ろで。
やばい、見たい。
いやでも、もうすぐ見られるんだ。
そう思うと、心臓が跳ね回るのを止められなかった。
そうだ、私も脱がなきゃ。
私は緊張で少し震える手で、シャツを脱ぎ捨て、ブラを取った。
まるっきり生まれたままの姿。
この姿を家族以外の異性に見られるのは、少なくとも物心ついてからは初めてだ。
綺麗だと思ってくれるかな、太ってるとか思われないかな、これでもそこそこ気を付けてはいるんだけれどな。
昨日たまたまムダ毛処理しておいてよかった。よくやった私。
緊張と不安で、まだ手は震えている。
でも同時に、期待もあった。
どんな言葉をくれるんだろう。
どんな楽しいことができるんだろう。
そんな期待だ。
「い、いいですよ」
「うん」
私は無意識にぎゅっと目をつぶっていた。
そのまま私はゆっくりと、後ろを振り向いた。