私達四人はそれぞれの家の中間地点ということで私のアパートに集まっている。
ローテーブルの上には乗りきらないほどのオードブル。
そのうち、いくつか私の手料理もあり、三人からは好評だ。
「菅野さん、ありがとうね。場所の提供から料理まで」
主任が少し申し訳なさそうに言う。
「いえ、お口に合ってよかったです」
「合うよーめっちゃ合う!すげー飯ウマだし部屋いい匂いだし茜ちゃんの部屋でよかったわぁ」
「泉谷、あんたのそれはセクハラだから」
しっかり者の春香ちゃんのツッコミは鋭い。
「でも、真面目な話、茜マジで偉いよ。普段から家事やってないとここまで整わないでしょ。主任、知ってます?茜ってお弁当も自分で毎日作っているんですよ。しかもクオリティめっちゃ高くて……」
「や、やめてよ春香ちゃん!」
「えー。じゃあ今度俺にも作ってよー!」
「あんたホント図々しいわね……まぁ、正直私もお金払うからお願いしたいとこだけれど。マジでプロだもん」
「待って、言い過ぎだから!さすがに照れる……!」
赤くなった顔を抑えると早瀬主任は「お世辞じゃないからありがたく受け取っておきなさい」と笑った。
「今日の料理もすごく美味しいし、僕も菅野さんにお弁当お願いしたくなっちゃうな」
その優しい笑みにキュンとする。
(掃除も料理も頑張ってよかった……っ!)
私は内心大きくガッツポーズをとる。
隣の春香ちゃんがぽんと肩を叩いてくれて、私にしか見えないようにサムズアップしてくれた。やばい、現時点で泣きそう。
お酒も箸も進む中、最初に酔ったのは泉谷君だった。
「しゅにぃん!俺もう、今回一緒に仕事してくれるのが主任じゃなかったら絶対仕事辞めてましたよぉ!」
主任に泣きつこうとして
「ちょっ……泉谷君!密、密だから!」
と主任が逃げる。
画面の向こうでは「俺も主任でよかった」「私も!」と頷くみんながいて、その中に
「おい、マジ泉谷距離とれ!てか俺と代われ!」
「いや代わっちゃだめだよね?」
「あーやっぱりモニターじゃ我慢できなーい!直接お酌したいですよー」
「リモートの意味ないだろ!」
等々、酔っ払いが生まれている。
「早瀬主任、小学校の先生みたいです」
「えぇー……片手に酒持った小学生なんてやだよ……」
軽口で返しながらも嬉しそうだ。
私達は、若手の意見であってもちゃんと聞き入れてくれて、留意点を抑えた指示をくれる早瀬主任が大好きだ。
だから、本部の無茶ぶりにだって、何かあったら矢面に立たされしまう主任を守るために全力で取り組める。
(それに……)
物腰の柔らかい姿勢も、迷ったときにそれとなく話しかけてくれる優しさも、尊敬を通り越す感情が芽生えてしまうくらい、私は主任を意識してしまっていた。
飲み会開始から早二時間。
超ハイペースで飲んでいた泉谷君が潰れて早瀬主任に膝枕して貰っている。