恋のはじまり

リモートの忘年会で憧れの上司と…

「西宮、好きだ。恋人になってほしい」

「へぁ……、こ、これ、夢ですか」

「悪いが、夢で終わらせる気は更々ないな」

ちゅ、と少しの不自然さもない動きで、柔らかいキスを落とされる。

この状況に頭は少しも追いつけないのに、私の身体は感電したみたいに頭から爪先まで痺れて、甘い歓びに震えた。

「私も……す、すきです、部長。ずっと好きでした」

「ありがとう」

照れくさそうに、けれど嬉しそうに微笑む部長を前にして、私は思わず泣きそうになった。

ずっと、指先だけでいいから触れてみたいと希い続けた人だ。

「遅くに押しかけてすまなかった。どうしても顔を見たくなってしまって。じゃあまた後日、ゆっくり」

部長はそう言うと、もう一度私にキスをしてから、玄関に向かって歩き出した。

私は咄嗟にその背に追いすがって、ぎゅっとコートの裾を掴む。

「このまま帰っちゃうんですか?もっと居てください、夢じゃないって思えるまで」

絶対に手が届かない人だと思っていたのだ、こんな奇跡、絶対に手放したくない。

「部長、すきです……」

私は怖気づく自身の腕を叱咤して、部長の腰にぎゅっと抱きついた。

「に、西宮」

戸惑いを浮かべる部長の声を聞きながら、それでも私は手を離せない。

「朝までいて、ください」

「……」

数秒の沈黙の後、部長はくるりと振り向いた。

それと同時に、筋肉質な腕で私を軽々と抱き上げると、足早にリビングのソファへ向かう。

「わわわ!?」

目を白黒させている私をソファの上に寝かせると、部長は私の顔の両脇に腕をついて、ゆるく眇めた眼差しでこちらを見下ろした。

「抱いていいのか?」

直截な物言いに思わず顔が熱くなるが、私は迷わずこくりと頷く。

触ってみたい、触ってほしい、それが抑えようのない正直な気持ちだった。

「あの、でも……もし部長が気乗りしなかったら……」

部長が恋したり、ましてや性欲を見せたりする姿が、全然想像できない。

せっかく奇跡的に両思いになれたのに、私ばかりが突っ走って、「すまん、やはり無理だ」なんて言われたら悲しすぎる。

恐る恐る部長の顔を見上げると、部長は両目をぱちくりとさせてから、くくっと喉だけで笑った。

「……!」

あまりにも部長のイメージにそぐわない、線の太い粗野な笑みだ。

混乱しながらも私の目は部長に釘付けで、頬は勝手に赤くなり、背中にゾクゾクとしたものが走る。

「乗り気かどうか確かめてみるか?」

「ひぇっ!?」

部長が私の膝を割って、身体を滑り込ませてくる。

大柄な彼にそうされると、私は思い切り脚を開くしかなくなってしまう。

体温の高い大きな掌が私の膝頭をすっぽり包んで、いとも簡単に上に押し上げた。

背中を少し丸めて足を開き、秘処を見せつけるような体勢にされて、私は全身が赤らむほどの羞恥で唇をはくはくとさせる。

「ぶ、ぶ、ぶぶぶ部長っ!?」

そこに、部長がぐぅっと腰を押し付けた。

「どうだ、西宮」

スラックス越しに押し付けられた部長の下腹は、たかぶりの兆しをしっかりと私に伝えてくる。

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