「もぉ、だめぇ……っ!」
羞恥心で理性が蕩けそうになる。
必死に、涙目で伝えても慶太お兄ちゃんは私のつんと固くなった乳首を舐めることをやめない。
――ちゅ……じゅぅっ!
「あぁん!んぁっ!もう、そこっばっかり吸わないでぇ……!」
柔らかい舌先がむずがゆくて、でもきつく吸われるとつんっと痛みが走って……。
私がもどかしく腰をくねらせたことを慶太お兄ちゃんは見逃さない。
乳首を優しく円を描くようにくるくると舐めながら、さんざん焦らし続けたナカに指を入れる。
「あぁっ!」
自分のそれとは比較もできない太い指。ナカをまさぐるようにかき回されると、無意識にきゅうきゅうと締めつけてしまう。
かくっと曲げられた指は、内側からざらざらしたところを持ち上げるようにくにくにと刺激して……まるで内側からクリトリスを苛められているみたいにじんじんする。
「ああ!……も、もう、ホントにイク!イクからぁ!」
「だーめ。さんざん人のこと煽ったんだ。お仕置き」
意地悪く笑う慶太お兄ちゃん。
その笑みに眩暈と……これから施されるであろう快楽に全身が震えた。
………
………
………
「ご主人様って何をやってもダメダメですねぇ。メイドにまで叱られちゃうなんて、情けなくないんですか?」
腰に手をやり、胸を張る私。
「そんなんじゃいつまでたっても旦那様に認めてもらえませんにょ……」
――噛んだ。思いっきり。
その瞬間、ぶはっと、目の前の男――幼馴染の慶太お兄ちゃんが噴き出す。
「あー!もう笑わないでよぉ!人が真面目にやってるのに!」
私、莉々子は悔しさと恥ずかしさで思わず顔を赤らめる。
「いや、すまん。……なんかこう、莉々子はどんなに頑張ってもドSメイドじゃなくてロリメイドなんだよなぁ」
本人を前にしてものすごく失礼なことを言ってくれる幼馴染。
セリフ回しに付き合ってもらっている以上強くは出られないけれど、次『ロリ』って言ったら絶対蹴る。
私はむしゃくしゃしながらマネージャーから渡された台本を見直した。
――私、莉々子は女優の卵だ。
プロ、と名乗れるかどうかは微妙なレベル。
でもこの度やっとオーディションでドラマの役を勝ち取った。
……ネット配信のみで、タイトルは「ドSメイド探偵」というイロモノ路線まっしぐらなそれだけど。
本格派女優を目指している私だが、仕事は仕事。もちろん全力でやる……ために、幼馴染に練習に付き合ってもらっている。
二つ年上の慶太お兄ちゃんは一応台本に目を通しておいてくれた、けれど、その反応は微妙。「なにかの拍子にバズるといいね」とのことだ。
「台本を読む感じ、莉々子が求められているのってSMの女王っていうよりツンデレ妹路線なんだろうな」
「……なんかニッチな感じだね」
「そもそもドラマの方向性がニッチだろ」
「……役作り……てか私に足りない要素多すぎる気がする……」
がっくりと膝をつけばいやいやと慶太お兄ちゃんは首を振る。
「足りてないのはエロさだけだろ。妹要素はばっちり」
「……」
慶太お兄ちゃんは、こういうデリカシーのないことをさらっという。
しかも私の自他ともに認めるなだらかな胸をガン見しているあたり、控えめに言ってサイテーだ。
実家から進学をきっかけに引っ越しをしてもご近所な私達ははたから見れば兄妹にも見えるだろう。
私としては、いい加減妹扱いをやめてほしいところなんだけれどね。
「……いつまでもダメダメなご主人様には、お仕置きが必要ですね」
私は気を取り直して台本を読むことを続行する。