あれから半月が経った。
なんと隣の夢久さんのお店が突如閉店した。
残念がる声が響く半面、あたしの店側は喜びすら感じていた。
「萌恵ちゃんは嬉しくないの?」
「あー嬉しいよ、そりゃぁもう!」
「でもさ、なんかちらっとお客さんから聞いたけど、
しばらく入院したことあったらしいね」
「…………え?」
聞き捨てならない。
だって、だって、あたしと付き合っている間はほぼ毎日会ってたよ?
「いつ?」
「店がオープンして、競い合ってた時みたい。それぐらいしか知らないけど」
「どこの病院!?」
「えー?この辺でって聞いたから、阪上病院じゃない?」
「ちょっと出かけてきます!!」
なんだか使命感に狩られた。
身体中があたしに血を運ぶたびに、流れるたびに悲鳴を上げる。
急げ、急げ!
と。
危険信号の黄色を回してる。
阪上病院に着いたのは、店を出て約18分後。
電車の乗り継ぎやバスで複雑だったけど、
昔あたしもお世話になった病院だから道順は完璧。
病院に入り、友達の看護師を呼び出してもらって、待つ。
嫌な予感がした。
怖い。やばい。なんだこの冷汗は。
「どうした萌恵ー」
「あ!七瀬!あのさ、この病院に知り合いが………」
彼を見つけた。
あたし、彼を見つけてしまった…………。
見るからに痩せてしまって、けれどいつものように眉間にしわを寄せて何か考えている。
「ありゃー萌恵に見つかったか」
「どういうこと?」
「あの人でしょ?萌恵の元カレ。」
「なんで知ってんの?」
「山本さん、いつも萌恵のいるお店とか、萌恵の話とかするからねー」
「…………どこが……」
「…………胃がんだよ。今はもう余力もないから、歩いて免疫あげているらしいよ」