「あれ?なんで先生がここに?」
「今日は帰る予定だったんだが、堂本の友達から飲み物を渡してくれと頼まれた」
ニコッと笑顔でペットボトルのエナジードリンクを手渡した。
「女子が珍しいな」
「エナジードリンクがですか?」
「あぁ」
「これ、私のルーティンなんです。父がよく仕事疲れの時に飲んでいたんです」
「過去形なのか?」
「私が10歳の時にバイク事故で亡くなりました」
「・・・すまない、立ち入った内容を・・」
「いいんです!」
グイグイ飲みながら、身体の細胞にアミノ酸が侵入してくるのを感じさっきまでの気怠さは一気に解消されてきたようだ。
吉沢先生は座っていた椅子から立ち上がり、千鶴のクラシックギターを借りてチューニングを始める。
「先生?」
「俺は昔からギターが好きでな。・・なんかリクエストあるか?」
「んー・・・」
「好きな歌手は?」
「!ABCです!yasuのファンです!!」
ここで一瞬、間が生まれた。
千鶴は言った後で「エロいな」と思われてしまったと一気に焦る。
訂正するのもおかしい。
「俺も割と好き。特にブラックチェリー」
「私もです!」
「じゃ、聴いてて」
激しいロック調のyasuの曲は、吉沢のクラシックギターの効果で穏やかで優しく聴こえた。
それから二分半ほどで一通り演奏が終わる。
感動した千鶴は喜んだ。
「すごい!」
「・・・それはお前だよ」
「へ??」