「いや、でもほら、これ」と、将人さんはシャツをめくってお腹を出した。
そして自らお腹の肉をつまむ。
結構肉がつまめている。
「あらら、筋肉が脂肪に変わろうとしてるのかな?」
「ヤバイかなあ?リンちゃん、俺が太ったら嫌いになる?」
「それくらいで嫌いになるなら、最初から結婚なんてしない」
将人さんが本気で悩んでるっぽいので、「だったらランニングを再開する?軽いランニングくらいなら問題ないでしょ?私もつき合うし」と尋ねたら、「いや、あの、厳しい選手生活から抜けたらさ~。そういう体を動かす系が嫌になっちゃって…」とのお答え。
「気持ちは分かるけど、ダメダメ人間になりかけてるよ、将人さん」
「楽してできるダイエットはないかなあ?」
「そんなもんがあれば、世の中から肥満問題は消えてるって。楽してダイエットな世界はサプリ広告の中だけだよ」
「よし!食事制限にしよう。よく考えたら、俺、水泳やめてからも食べる量がほとんど変わってない気がする」
確かに、将人さんが食べる量は水泳をしていた時とそれほど変わっていない。
「でも野菜と魚中心で薄味にしてるし、おやつも私の手作りで甘みは抑えてるし…」
「いくらヘルシーでも、量を食べればそれだけ影響するでしょ?」
「それはそうかもしれないけど」
「だから、味無しの食事にして」
将人さんの提案に「は?」と、私の目が点になる。
「おいしいから食べてしまう。なら、おいしくなければいいんだ」
「それは一理あるけど、それ、ダイエットと言うより拷問に近くない?」
「楽なダイエットはないと言ったのは、リンちゃんでしょ?」
「う~ん…。分かった。とりあえず、やってみようか」
「で、申し訳ないけど、お弁当作ってくれる?」
私達夫婦は共働きだけど、将人さんは残業が多い職種なので平日家事の大部分は私がしている。
休日は分担しているが、押しつけて申し訳ないからと将人さんは昼食は社食を食べていた。
「お弁当を作るのは全然問題ないから、明日からやってみる?」
「うん!」