あたしは天涯孤独だ。
家族は昔に交通事故で亡くなっている。
“家族”と呼ばれるものに、どこか憧れを抱いていたのではないかと思うときがある。
「池田!池田はどこ!!」
この声は奥様の声だ。
あたしを探している。
あたしは掃除で使っていたほうきを一時的に置いて、奥様のもとへかけつけた。
「奥様、いかがでなさいましたか?」
「池田!アンタ主人の居場所知ってる!?」
そうです。
「えーっと……知らない、です」
「まったく……明日は会議があるのに何をしているのかしら!見かけたら私の部屋にって言っておいて!」
「はい、かしこまりました」
ご主人様は地下にこもっているのです。
なぜかって?
それはあたしを待っているからです。
あたしと身体の関係を。
つまり、セックスをするために準備をしているのです。
………
………
………
あたしとご主人様の身体の関係は、もう数年前から続いています。
あたしが街の隅で泣いていると、ご主人様と奥様は、
優しく手を差し伸べてくれました。
ものすごく久しぶりにお風呂に入って食事をして。
そんな当たり前の生活を与えていただきました。
けれどもあたしがこの屋敷に来て、メイドの仕事をするようになった頃です。
「
「?はい」
ご主人様が誰にも見つからないように、地下へとあたしを誘導した。
暗い階段を降りると、そこにはベッドや薬の棚があった。
「あの、ここは?」
「私と莉菜の秘密部屋だよ。ここで莉菜は、僕に身体をささげるんだ」
最初はなんの冗談か?と思った。
しかし目は真剣だった。
怖い。
怖いよ…………
「さ、おいで莉菜。優しくしてあげるから………」
これが始まりだった。