恥ずかしい。
本音を伝えるのは、いつだって恥ずかしい。
照れてしまうのは、誰だって仕方がないと思う。
でも、これを伝えた方が、きっと誤解なく、彼女と交わることができると、そう思って俺は彼女に本音を伝えた。
「俺、みんなの目に留まるくらい咲さんが可愛いって思うと、嬉しかったんですけどね」
「うん」
「でも、なんか、そんな可愛い咲さんの彼氏は俺なんだぞ、って思うと、咲さんを誰にも見せたくない、って思っちゃったんです」
そう。これは、ただの嫉妬。
しかも、こんな嫉妬は理不尽もいいところだとは思う。
でも、そんな気持ちを抱いてしまったのだ。
「何それ」
彼女は、俺の台詞を聞いて笑った。
「わ、笑わないでくださいよ」
俺は、その笑いにつられて彼女の方を見てしまった。
目が合った途端、彼女は俺の首元に腕を回してきて顔を引き寄せた。
そして、俺の唇に強く、口づけをした。
しっかりと口と口が結びついて離れないくらい、彼女はしっかりとキスをした。
でも、舌は入れてこなかった。少し不思議な、キスだった。
「私もね」
彼女が俺の首元に回した腕をほどくと、彼女は頬を赤くしながら言った。
「思ってたの。なんか、他の人に見られるの、悔しいなって」
だから、おんなじだよ。
彼女は俺の胸に顔を隠しながら、そよ風にさえかき消されてしまうくらいのかすかな声でそう言った。
「だから、健くんを独り占めできるのは嬉しい」
やっぱり俺の胸に顔を隠しながらそう言った。
熱に浮かされてぼんやりとした頭でも、その言葉の意味を考えるのは時間がかからなかった。
「じゃあ、今から少しの間は、咲さんは俺のものです」
「女性をもの扱いするのも、今時流行らないよ?」
「俺も、咲さんのものになるから、だめ、ですか?」
彼女の冗談に、俺も冗談で答える。
彼女はちら、と一度だけ目線を外して、もう一度俺に目を合わせた。
「じゃあ、私のものにしちゃう」
また、彼女は唇をおしつけてきた。
でもさっきとは違って、今度は舌を入れてきた。
濃厚に絡み合う舌に、俺は脳髄が痺れていくのを感じる。
じわじわと幸せが頭の中にあふれていき、そして、自分が自慢の彼女と一つになろうとしているのだという感覚が、体の中に染みわたっていった。
「咲さん、俺」
「ん?」
「俺、咲さんのこと、好きですよ」
「どうしたの、急に?」
「いつも思ってることです」
「ふふふ」
彼女は、嬉しそうに、そして幸せそうに笑みをこぼしてから言った。
「私も、好きだよ」
上目遣いにそういう彼女が、かわいくて。
俺は心臓が張り裂けそうなくらいに早鐘を打っているのを感じた。
「さ、さきにシャワー、あ、あびちゃいましょうか」
俺がそういって促すと、彼女はまた、おかしそうに笑みをこぼした。