学生もの

修学旅行の夜にずっと好きだった人と・・・

うつむかせていた顔を両脚の間から挙げて、時計を見た。

約束の時間から丁度10分過ぎている。

秒針の動く速さは一定の筈なのに、その音を聞いていると、それと比例して鼓動のリズムが早くなる。

まるで何か不安や恐怖に追われる様な焦りと、彼の来る気配の全く無いもどかしさに、愛花は泣きそうになった。

(もう、諦めようかな…)

そんな考えがスッと頭を掠めた瞬間、ノックの音が静かな部屋に響いた。

そしてドアが開くと、そこには颯が居た。

彼は息を弾ませながら、じっと愛花の方を見て、部屋に入って来た。

その時の颯の、指定ジャージを来た体が妙になまめかしく感じられた。
………

………
「あ、ごめんね、愛花さん、遅くなっちゃって」

「ううん、いいよ。こちらこそ、こんな時間に呼び出しちゃって、ごめんね」

颯は愛花の隣に、緊張した様子で座った。

(あぁ、颯君、とてもいい匂いだなぁ…)

愛花は、颯の野球で鍛えられたたくましい体と熱い吐息に、一種の情欲を感じた。

「ねぇ、皆は何処に行ったの?」

「何か、お風呂に入りに行ったよ、さっき入って気持ち良かったからって、もう一回」

「そ、そんなんだぁ…で、話って、何なの?」

「ん?あ、その…」

愛花は目を少し潤ませて、俯いてしまった。

が、直ぐに覚悟を決めた様にスッと顔を上げて、颯の目を見て、自分の彼に対する恋情を伝えた。

しかし、愛花はその時、自分が果たして何を言ったのか、とんと記憶に無い。

唯一覚えているのは、颯もまた、彼女に好意を寄せていた、その事だけである。

颯は不意に、股間に違和感を覚えて、直ぐにそこを大きな手で隠した。

しかし愛花には、既に彼の異変に気付いていた。

颯は何としても、彼の肉棒が秘めたる野獣の性を抑えようとした。

が、愛花の仄かに桃色がかった頬や肉付きの良い体に、

彼は身内に熱い情欲を感じざるを得なかった。

愛花も彼の感じる情欲に、思わず伝染されて、何だか頭がぼんやりしてくるのを感じた。

2人っきりの部屋、清潔な布団、そして修学旅行の夜に部屋に男女2人っきりでいる背徳感…

「あ、皆はまだ戻って来ないかな?」

「うん、ど、どうだろう…」

「あの、もし良かったら、ここで、しない?」

愛花は、恥ずかしそうに、コクリと頷いた。

何をするとも言っていないのに、それはまるで新婚の夫婦の様であった。

 

「でも、ゴ、ゴム?コ、いや、あ、あるの?」

そう聞かれて、颯はジャージのポケットを探したが、何も入っていない。

(あれ、財布…あ!忘れてきた!)

「あ、へ、部屋にあるわ…今取ってくるから、ちょっと待ってて!」

こう言って颯は立ち上がり、部屋を出た。

颯は直ぐに戻って来た。

愛花は彼が隣に座ると、何をしたら良いかわからず、とりあえず体育座りしていた脚を横に崩した。

「んと、キ、キス、するか」

「うん」

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