目が覚めると、薄く隙間の空いたカーテンから、ほんの少し明かりが差していた。
遠くから車の走る音が聞こえてきた。
ゆっくりと体を起こして、息を吸い込む。
昨日の夜に流した汗の香りが、ほんの少しだけ残っていた。
僕はカーテンを開け、窓を開けた。
風がふわりと舞い込んできて、さっきまでの残り香を消し去った。
日はさんさんと輝いているが、風はさわやかで、とても心地いい。
土曜日の朝七時前。
僕たちは、休みの日もそこまで遅くまで寝るわけではない。
昨日は夜も盛り上がりはしたが、十二時には寝た。
やはり、朝から起きて活動しないと一日を無駄にしたような気がしてしまう。
それが、僕も彼女も、嫌だったのだ。
のどかな日差し。今日もいい日になりそうだ。
「あ、起きてたんですね。おはようございます、浩太郎さん」
「おはよう、佑実」
彼女も目を覚まし、ベッドからむくりと起き上がった。
付き合ってからもう三か月。
毎週土曜日は、大体こうして彼女と過ごしていた。
彼女の家の時もあるし、僕の家の時もある。
金曜日の夜から泊まって、土曜は一緒に過ごす。
これがここ三か月のルーティンだった。
「今日はいい天気ですね」
「そうだね、どこかへ出かけるのもいいかもしれない」
「そうですね」
彼女はネグリジェを羽織った体を、布団で隠しながら僕の方を見つめていた。
「これからどうしようか」
「まずは朝ごはんですね」
そう言ってベッドから立ち上がろうとした彼女の肩に、僕は手を置いて止めた。
「え?」
「でも、その前に」
そして、彼女の唇にやさしくキスをした。
「なんですか?」
唇が離れた瞬間、彼女はいじわるな笑みを浮かべていた。
「しよう」
「昨日あんなにしたのにですか?」
「したくないの?」
「したい、です」
僕はもう一度キスをした。
今度は舌も絡めて。
僕はこうして、朝から彼女とキスをするのが好きだった。
朝の彼女は、素顔だ。
化粧もしていないし、メガネもかけていない(いつも彼女は、白縁のよく似合うメガネをかけている)。
そして何より、無防備だ。
「朝から興奮してるんですか、浩太郎さん」
「だって、君が誘惑してくるからさ」
「誘惑?」
「ほら、そんな恰好で」
「これ、は……」
彼女が身に着けていたネグリジェはシースルーで、胸のふくらみも、陰毛もすべて、うっすらと透けて見えていた。
「これは、昨日……、その……」
「でも、僕のために着てくれたんでしょう?」
「そうですけど……」
彼女の頬は、朱色に染まっていた。
彼女の肌は透き通るような白で、紅潮すると、その頬は綺麗なピンクになる。
ネグリジェの色も相まって、彼女の乳房もそのピンクに染まっていた。
こういう透けのエロスを発見した人を、僕は初めて天才だと思った。
彼女がこれを着ていると、いつも以上に魅力的に見えて、僕の欲望を掻き立てるのだ。
「じゃあ、もっと見せてよ」
「えっち……」
僕は彼女のささやく言葉を無視して、彼女の方に詰め寄った。
彼女はすす、と後ろに下がっていって、自分から壁の方に背中を付けた。
彼女の二つのふくらみに頬を寄せると、さっきまで眠っていたからか、いつもよりも温かくて、布伝いにじんわりと熱が伝わってきた。
僕がネグリジェの上からそのふくらみの先端を触ると、その突起はゆっくりと固くなっていった。
指先で転がすと、それはピンとした弾力をもって、僕の指を跳ね返してきた。
「んん……」
彼女が漏らす吐息が僕の肩にかかった。
「どうしたの?」
「聞かないでください……」
僕が彼女の顔を覗き込むと、彼女は目をそらした。
僕はわざとゆっくりと、彼女の突起をいじった。
両方の手で、両方のそれを、ゆっくりとなぞった。
「んふぅ……」
彼女の思わず漏れた吐息。
その声を聞くだけで、僕は自分の中心が熱くたぎっていくのを感じた。
「かわいいよ、佑実」
「もう、ずるいです、浩太郎さん」
「ずるくなんかないよ」
「ずるいんです」
彼女はそういって、僕の顔を見ないようにしながら、僕の耳を甘噛みした。