僕はまた体勢を変えて、彼女と並ぶように体を横たえた。
まだ僕の性器は窓から顔をのぞかせている。
彼女にすべてを搾り取られてしまったからだろう。
今は先ほどまでの姿が見る影もないほどしおれてしまっている。
「また飲んじゃったの?無理して飲まなくてもいいんだよ?」
「好きなんです、あなたの愛液が」
「そういわれると、嬉しいけれど……」
今までの恋人からは、そんな風に言われたことは一度もなかった。
だからかは知らないが彼女にそう言われると、僕は嬉しくなってたまらなかった。
さっきは、朝だったからかは知らないけれど、いつもよりも多く出てしまったような気がする。それを飲まれてしまったのだと思うと、僕は少し照れ臭かった。
「でも、なんかそのネグリジェを見てると、いつも以上に興奮しちゃうんだよね」
「そうですか?」
「うん、なんていうんだろうな、服を着ているのに透けて見えている分、いつもよりも背徳感があるっていうか……。
見えちゃいけないものが見えているっていうのが、たまらなくエロいんだよ」
「正直ですね」
「表現しようがなくて」
「でもよかった、狙い通りです」
彼女は頬を少しだけ赤らめてはにかんだ。
その表情がとても愛しくて、僕は彼女の頭を撫でた。
朝起きぬけだから、少し乱れてはいるけれど、その柔らかさは変わらない。
指を通すと、それは何の抵抗もなく指の間を通り抜けていく。
いつもなら、そのさらりとした髪に天使の輪ができている。それはもう、綺麗な天使の輪だ。
僕は彼女を初めて見た時、それこそ天使なんじゃないかと思って、どきりとさせられたことを覚えている。
彼女の容姿は、失礼をはばからずに言うなら、特別整っているというわけではないと思う(それを言うなら、僕だってそうなのだけれど)。
ただ、その控えめながらはっきりと意思を感じさせる表情と、メガネの奥に見える透き通った瞳は、誰にも負けないくらいに美しい。そして、魅力的だ。
それはきっと、彼女の持っている唯一無二の美しさなんじゃないかと、僕は思っている。
「ありがとう、僕のために」
「いえ、私も、浩太郎さんともっと楽しくエッチしたいな、って思ってたので」
「うれしいよ」
もう一度彼女の頭をなでながら、僕は優しくキスをした。
彼女の唇は、少ししょっぱかった。
けれど、とても柔らかかった。
「あれ?」
「ど、どうしたの?」
「もしかして」
「ばれたか」
疑わし気な表情をした彼女の手は、僕の性器に伸びていた。
そう、さっきまた彼女の姿を見た時に、「透けのエロス」を感じてしまって、固くなってしまっていたのだ。
僕もこれまでいろいろな人生経験を積んできたとは思っていたが、こういうところばっかりはいつまでたっても成長しないらしい。
やはり、エロスを感じるときは、どうやっても大きくなってしまうのだ。
「また興奮してるんですか?」
「その、お恥ずかしながら」
「エッチですね、朝から」
「そんな恰好をしているから……」
「言い訳ですか?」
「面目ない」
僕が冗談めかして言うと、彼女はくすりとほほ笑んだ。
「挿れてもいい?」
「はい……」
しかし、そこでなぜか彼女は声をよどませた。
「いやかな?いやなら全然……」
全然いいんだけど、僕がそう言おうとすると、彼女は、
「違うんです!」
と、少し大きな声で僕の言葉を遮った。
「その、ですね……」
「うん」
彼女の声は、幾分真剣な色をにじませていた。
しかし、その手は僕の肉棒から離れてはいない。
「ゴムは、つけないでほしいというか……」
「生でしていいっていうこと?」
「た、端的にいえば……」
彼女は少し顔をうつむけていた。
おそらく、その頬は真っ赤に染まっているのだろうと思う。僕から見える耳も、それは綺麗にピンクに染まっていた
「どうして?」
「だ、だって……」
「だって?」
「浩太郎さんとなら、してもいいって思ったから……」
彼女はもっと顔をうつむけた。
僕からはほとんど頭のてっぺんしか見えない。
僕は、その顔を見たくなって、彼女の頬に手を当てて、ぎゅっと顔を持ち上げた。
「や、やめてくださいよっ!」
大声を上げる彼女。
「顔、真っ赤」
「もう……」
彼女は怒ってはいたけれど、それでもとても、幸せそうだった。
「僕も、したいって思う」
「ほんとですか」
「うん、でも、ほんとにいいの?」
「はい」
少し不安そうではあったけれど、嬉しそうでもあった。
「あ、一応今日は安全日なので、その、いきなり妊娠とかはたぶんないと思います……」
「ははは、分かった」
僕はまだ頬を支えたままだけれど、彼女はそれでも僕と目を合わせようとはしなかった。
それで僕も恥ずかしくなってしまって、顔が熱くなっていくのを感じた。
「じゃあ、してもいい?」
「はい」
彼女はここで初めて、僕と目を合わせてくれた。
彼女の瞳は、やっぱりとても、綺麗だった。