私は佐々木陽子(ささきようこ)。
もう3年ほど前に結婚をして、幸せな家庭を描いていました。
しかし、私は限界がきている。
それは旦那が帰ってこない日が多いということについて、だ。
朝は私が早いために、朝ごはんの支度をして先に出勤。
お昼のお弁当はもちろん前の日の夜に作ってある。
それは旦那も知っていること。
なので自然と旦那は朝ごはんを食べて、
出勤前に冷蔵庫からお弁当を出して、出勤している様子。
お昼は旦那のお弁当と夕飯の残り物。
こんな暮らしを、私は甘んじて受けているのだった。
………
………
「佐々木さん?」
「え!?」
会社では家庭を考えていてボーっとしていた。
そこを上司の東間(ひがしま)さんに声をかけられて、
いつもよりも大きな声を発してしまった。
「すみません、大きな声で‥‥‥」
「いやいいんです。それより体調悪いんですか?顔色が優れませんよ」
優しい東間さん。
社内で一番優しい人。
旦那と結婚していなかったら‥‥‥
なんて夢の話だ。
「私、少し風にあたってきます」
こんなこと考えるとか、社員として最悪。
切り替えないと。
そう、思って許可をもらって私は執務室から退室した。
‥‥‥
‥‥‥
「ふぅ‥‥‥」
風の冷たさが逆に気持ちよかったり。
少しだけ心の雲が薄れてゆく。
けど、帰ったらまた同じことの繰り返しなんだ。
旦那の朝ごはんの後片付けをして、
二人分の夕飯を作り、
20時ころに私は一人で夕飯を食べる。
旦那はいつも通り、
帰宅は23時あたりだろう。
私はやつれていくのだろうか。
こんな生活ばかりで、楽しいことなんか何もない。
最悪なことに私はこれといった趣味も、
憂さ晴らし方法も知らないんだ。
「‥‥‥私が死んだら喜ぶかな‥‥」
なんてつぶやく。
「旦那さんが喜ぶとかおかしくないですか?」
「だって‥私と別れられると思うかもだし‥‥‥ん??」
自分ひとりのつぶやきに返事があって、答えてしまった。
慌てて振り向くとそこには東間さんがいた。