恋のはじまり

私の部屋に誰かいる

「ん、ふ、あぅ……ん?」

 頭から輪郭りんかく、そして首をくすぐるように撫でていた手が、やわやわと私の胸を掴み、そして、はっきりとした動作で揉んできた。

「はぁ……こんなときまでノーブラかよ……」

 すこし苛立いらだちを含んだような伊織の声音。

 私はノーブラじゃなくて、キャミにカップがついてるブラトップなんだけど……と、どうでもいいことを考え――

いや、それどころじゃない? 

 混乱中の私は、なぜか咄嗟とっさに抵抗することも、起きて冗談混じりに笑うこともできなかった。
………

………
「あー……柔らか……ずっと揉んでたいわー」

 もにゅんもにゅんと、そこそこ豊満な私の胸は伊織の手によって揉みしだかれてしまう。

 遠慮のない手つきはまるで慣れているかのようで、マッサージでもされているかのようだった。

(うう……伊織ってもしかしておっぱい星人だったの……)

 やがて、ブラトップの裾から手が入り込み、直接素手で触れられる。

硬くなり始めていた乳首をきゅむっと摘まれると

「んくっ」

と思わず声が出た。

「莉乃……かわいい」

 こりこりっと甘やかすような手つきで捏ねられる乳首。

 さすがに素肌で胸を揉まれるのは、ただのじゃれあいじゃ済ませられない……。

私の知らない伊織がそこにいる気がして、目を開けるのが怖くなる。

(んっんっんっ! 指でなぞられるのぅすぐった……! 声出ちゃう……)

 伊織の指先は乳首をすりすりと擦っては、くるくると乳輪をなぞる。

指をすぼめるようにふわっと胸を撫でられるとたまらず腰がうずいて身を捩るしかない。

「莉乃.…」

 ぴくんぴくんと伊織に触れられたところが疼いて、火がついたように熱くなり、淫靡いんびな刺激に従順になる。

 寝たふりをしている私は、起きているのがバレちゃうからはっきりした抵抗ができない……て、あれ?

(私……なんで起きている、バレたくないの……?)

 まるで、悪いことをしているのが私のような、この状況を楽しんでいるような……。
………

………
 ころころ、すりすりと乳首を指先で甘やかされては、もにゅもにゅと男の人特有の大きな掌で揉まれ……ふっと、顔に何か、近いものの気配を感じた。

(ん……? んんっ!)

 ぷにゅ、と。

 唇の、薄い皮膚が柔らかく生暖かいもので重ねられる。

角度を変えてむっちりと当てられたそれが、唇であることはすぐわかった。

 一方で

(えぇぇ! 嘘、なんで? え、だって、これ、ききき、きす、キスだよね?)

 キスを『伊織に』されたことへの衝撃で心臓が暴れる。

「……ん、はぁ……莉乃……」

 伊織は一度唇を離すと、切なそうに私を呼ぶ。

(こんな、恋人にするみたいなキス……)

 つい、薄目を開けようとしたところで、再び唇を重ねられる。

 今度は息を奪うような、熱くて深いキス。

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