圭人は
「ほら、立てよ」
峰子は直ぐに立とうとした、しかし又思い直して、怒ったように顔を背けた。
圭人は溜息をついて、
「悪かったよ、ごめん」
と言った。
それでも峰子は黙っている。
圭人は全く困惑して、不図、峰子の左手に注意を向けた。
峰子の左手は小刻みに震えていた。
そしてそれに気付くと、漸く峰子の先程までの不安と恐怖による怯えが手に取るように感じられた。
峰子の
「本当にごめん!もう二度と、あんな事はしないから、許して欲しい」
圭人は傘を投げ出してそう言うと、その場に土下座をした。
峰子は驚いて彼の土下座を眺めていた。
それは初めての光景であった。
今までにも何度か似たような事があって、その時は結局時間が解決してくれて、圭人も軽い謝罪で済んでいたのが、今回、雨に濡れて震えている峰子を見て、圭人は漸く自身の罪に対して激しい
峰子の目に微かな同情が表れた。
峰子は腰を上げて、尚も圭人の頭を見下ろしていた。
「もう二度と浮気はしない?」
圭人は頷いた。
「本当に?」
「うん、本当に」
「わかった、じゃあ立って」
圭人はそう言われて立ち上がった。
すると突然圭人の頬にビンタが飛んで来た。
パシンっ!と音が鳴って、圭人の懐に峰子が抱き付いた。
圭人は自分より小さな峰子の顔を上に向けて、その雨に濡れた唇に重ねるようにキスをした。
峰子は両手を圭人の首の後ろに持って行き、片方の手を肩に、もう片方を後頭部に当てて、グイッと自身に引き寄せる。
圭人も峰子の腰を自分の腰に引き寄せて、彼女の口周りの雨を舐め上げて、お互いの舌を絡ませ合う。
二人は顔の角度を変えながら、濃密で猛烈な、妖艶で豊満な、
そんな二人の周りには、只、無闇に大雨が振り続けるばかり
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