「う…そ……。」
「ん?どうした、葉月?」
「だってこの車!あなたが亡くなってから、お父様が廃車にしたって…!」
「葉月、俺はここに居るよ。どこにも行かない。それに今日は、葉月の28歳の誕生日でもあるんだから」
イマ…ナンテ言ッタ…?
「恭平…、いま
「レイワ?なんだよ、それ? 今は平成30年だろ? どうしたんだよ、葉月?暑さでちょっとボーッとしたか?」
「ううん…、大丈夫…」
平成30年のあの日…。
海辺のホテルの中のレストランでプロポーズをされた後、私たちは深く愛し合い、そして眠りについた。
その次の日の朝、海辺の砂浜で散歩をしていたら、人が溺れているのを、恭平が助けに行くけど結局、2人は命を落としてしまう結末になってしまう…。
………
………
………
本当に夢なのだろうか?
それとも私が過去に戻ってしまったのだろうか?
「葉月」
「え、な、なに?」
「今日も可愛いな」
「っ!」
恭平のサラッとした褒め言葉と笑顔が、やっぱり好きなんだ。
たとえこれが夢でもいい。
また恭平と一緒にいられるなら、夢でも、過去でも変えてみせる!
そう思いながら、3年前のデートを思い出しながら再現をしていった。
確か私たちは未来についての話をしながらドライブを楽しみつつ、ホテルのレストランへと車を走らせたことを…。
そして私はここで起きたことが、3年前と違うことを知った。
まずは案内されたレストランの席が特別席であったこと。
そしてそこはレストランの創業記念と顧客の記念日と合わないと使えないこと。
まさか、レストランのバースデーケーキと、粋なプレゼントの中に、恭平のプロポーズリングが入っていたことには本当に驚いた。
3年前は普通にジュエリーケースを開いて、
「結婚しよう」
だったのが、こうも変わってしまうのか!夢でも結構おいしいな…。
確かこのあとは、取ってある部屋に移動して、シャワーを浴びてイチャコラセックスをしてた記憶があるんだよね…。
「三葉様、本日のお料理はいかがでしたか?料理長の麻木です」
「麻木さん、本日はありがとうございました。とても美味しくいただけました。彼女の葉月もとても喜んでいます」
「葉月様も楽しんでいただけたでしょうか?」
「はい、とても美味しい料理を堪能できました。ありがとうございます」
「それは良かった。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ。失礼いたします」
麻木料理長は一礼をし、テーブルを去って行った。
「恭平」
「ん?どうした?」
「今日はありがと!素敵な記念日になったよ♡ 指輪も…私の誕生石が入っててすごく嬉しい…」
「ん、それくらい当たり前だろ。だって俺たち、結婚するんだから」
「うん、そろそろ部屋に戻ろう?」
「お…おう…」
なんだろう。
今だけ、今だけでもいいから、恭平との思い出をもう一度、思い出したい。
そして感じたい。
このカラダに刻みたい。
その思いからなのか、恭平を誘う感じに部屋に戻ろうと言ってしまった。